ENo.0579　オルハ・Ｄ・マインド

何かをデザインしたり、それを形に起こしたり。

そういうことは結構好きだ。

地下の世界に居たときから、そうだった。
生前は……どうだったかな。

実は最近、生前の記憶みたいなものがかなり薄れてきている気がする。
古い順からそうなっていくのか、体の…脳の異常なのか、よくわからない。調べる術もない。

でも、いい気分じゃない。

父親の顔や母親の声も、ほとんど思い出せない。
死んでからだいぶ経ってるからっていうのもあるかもしれない。

「嫌だな……」

そう呟きながら、紙に書き込んでいく。

設計図に書いたものを形にしたり、デザインのまま作れなくて妥協したり、諦めきれなくて作り直したり、没頭してる時は嫌なことは緩和できる。

「…マスター・オルハ。休憩のお時間です」
「……休憩って？」
「報告します。前回の休憩から三時間経過しています。適度な休憩を取って下さい」
「……でも、ここがもうちょっと」
「報告します。前回の休憩から――」
「わかったよ！もう、同じ事言うなよ…」

一人で黙々作業してたいのに、こいつは休憩しろとか言ってくる。
誰かに会いたい気分じゃない。
でも、こいつは人でもないし、人工知能は乗ってるけど感情とかあるわけじゃないだろう。
それでも、人間の…オレに伝わる言葉でナニカ言われるってコトは、それは誰かが居るに等しい気がする。

休憩してるのを確認してるのか、コマルはデカい目をこっちに向けている。

「あのさ、オレ一人で作業したいからお前のこと電源とかオフするとかしたいんだけど」
「ピピッ…電源をオフにすると、電気の供給もストップされます」
「そうなると？」
「次に電源を入れた時、初期設定からはじまります」
「なんで！！？いや、おかしいだろ」
「スリープモードをオススメします」
「…あー、そう。そのスリープモードは静かなのか？」
「ピッ…スリープモードに移行しました」
「……まだ話の途中なんだけど」
相変わらず会話が噛み合ってるようで噛み合わない。
大体、なんで電源切っただけで初期化するんだ？おかしすぎる。
もしかして、おかしい人工知能だからあんなスクラップばっかりあるようなところにあったのか？
「……わかんねぇ」

もやもやとはしたが、そのあとの作業はスムーズでなかなか良い出来の軽多脚が完成した。
これで超旋回状態が保てる筈だ。
「よし、今回こそいい結果が出るといいんだけどな」

オルハが臨時で作ったユニオン。
反応をあげ隊。