ENo.0113　スタニスワフ・クビツァ

毎日が噎せ返るような暑さだな。
朝目覚めて眺める、呆れるほどに広い天井には染み一つなく、晴れ晴れとした表情で新たな門出を迎えた俺に対して祝福とやらをしているようだった。


戦争が、終わった。
大勝だ。俺のリハビリ中に片が付いた。
覇権とやらも無事に取れたらしく、その後はどこもさっぱり楯突かなくなって寂しいもんだ。

膨らんだ風船も、いずれは萎むしな。
軍備もまあ、だいたい似たようなところか。
俺は勲章と、長ったらしい役職をもらった。
体の良い厄介払いみたいなもんだが、養って貰えるだけ相当マシなもんだろう。
ちっとは名の通る家に生んでもらえたことを感謝しなきゃならねえ。

平和と金と、満たされているってのは、忌々しいもんだ。
呪いとも言っても構わねえ。
俺は……活きる場所は、こんなとこじゃねぇんだ……こんなとこじゃ……
ん、なんだ？マスター？もう店を閉める、だと？
ふざけたことを言うんじゃねえ。俺を誰だと思ってる。
先の戦争で勲章を授かった、スタニスワフ・クビツァだぞ…………


そこからの帰りは覚えていねえ。
ぼんやりとした感覚で、知っている道を辿っていたら……ここだった。



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「またちょいと昔の夢を見たな。」

「前のよりはいくぶんか後だが。」

「後ろなんて向いている暇なんぞどこにもねえんだがな。
さてと、あいつもまたあんたの夢の形ってやつだろ？」

「俺の夢と、あんたの夢。
どちらが強いか、戦わせてみようじゃねぇか。」

残像領域の外れ。不法投棄されたスクラップの山に紛れ、謎めいたバラックが建てられている。

周囲には怪鳥が集い、上空には雷鳴が轟き、夜な夜な怪人の叫びと美女の悲鳴がこだまする――そんな尾びれ背びれが山積みの噂に惑わされず、一歩を踏み込む勇気があれば、小屋の主は喜んで貴方を迎え入れるだろう。

「霊障とはいっても、要するに心霊現象なのだから……こういう雰囲気が大事だろう？」

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