ENo.0082　アキ・ニタドリ

夢を、見ていた。

真っ暗な鋼鉄の棺の中、私は操縦桿を握り締めている。
そのうち、モニターが光り、棺を明るく照らした。
モニターの外は何時か見たような荒野だった。
空は雲で覆われ、青空は見えない。代り映えのしない、霧の領域。

「ミストエンジン、起動」

私は普段やっている通りに、機体の起動プロセスを開始する。

「各電力出力、チェック」
「アクチュエータ、チェック」
「全モジュール、ロード終了」
「FCS、起動」
「レーダー、起動…」

レーダー画面が起動し、周辺の反応を映し出す。

4機。

機体の周りに4機のウォーハイドラの反応があった。
IFFは味方のもの、機体の識別名は────。

「────嘘。」

WH-Kx0ACF。
5年前、私が「わかたか」にいたあの頃の、訓練用ウォーハイドラの識別名。
つまり、あの機体に乗っているのは。

「皆…？」

カメラで捉えようとする。
だが、霧に阻まれ、その姿を見ることはできなかった。
そのまま立ち竦んでいると、一つ、また一つと反応が動き始めた。

「待って…」

慌ててスラスターを起動し、追いかけようとするが、機体が応答しない。
レーダーの光点は止まることなく、ゆらゆらと離れていく。

「待ってよ…！」

あぁ、あの時と同じなのか。　あの時と同じように、私はまた────。

「待って！」

────置いていかれるのか。