ENo.0147　フェティヤ・クェリフィート

***

『私』は、しがない車掌だ。
田舎の一家にひとり生まれ、ただ走る電車に目を奪われ。
そう厳しくもない人生を歩んできた。

端的に言えば「つまらない」人生だったのかもしれない。

一つ特異な点を述べるなら、それは死後も意識があることだろう。
幽霊になったのだ。

……幽霊とは言ってもあのかもめとは違い、そこにあるのはただ漂う意思だけだった。

私の電車は今、鳥の形をとった少年に操られている。
かもめの幽霊とは仲が良いようだ。


生前の私は頑固だった。
死後あらゆるものを失っていたが……
電車に対しての情熱だけは体へ置いてはいかなかったようで。


私の車掌帽をかぶり、私の電車を操るあの鳥が。

……少し、嫌いだった。

***



まただ。
たまたまとは言いにくい。

……少し、焦ってるのかな。

目の前でモーヴェがおちた。
テキも。
ナカマも。
おれも。

だけど、おれは死んでない。モーヴェは……もう死んでる。
テキは……死んでるのかな。
おちてったナカマの中にも、きっとしんだやつがいるんだろう。


おれは、帰れるのかな？


眠ったらそのまま起きないんじゃないか。
戦いに出たら、次はおれの番なんじゃないか。
もうかあさんととうさんを見られないんじゃないか。


すこし、こわい。


明日も頑張ろう。

壊れてしまった、もはや時代遅れ、彼氏にフラれた腹いせ。
あれこれの理由で積もったジャンク品の山の中。
打ち捨てられたようで、実はとても手入れの行き届いた三段櫂船型ハイドラが一機。
ある一人の幽霊が、そこで暮らしているのだ。


「メシと寝床？必要なら出すけどオレあんま料理上手くねえよ」