ENo.0005　パアム・ライザ

　霧が肩を濡らす。
　残像領域を思わせるような霧に包まれて、遠目に見えるはずの住宅街すら白に紛れている。
　人気無く、霧に包まれて動きらしい動きが無いからこそ、石畳をコツリ、コツリと打つ足音が響く。

　やがて、足音は一つの構造物の前で止む。

「ただいま、父さん」

　墓だ。彼女の、パアムの父親の墓だった。
　残像領域から帰還し、母と再開した彼女はしかし、父の死を知らされた。父は、彼女をクーデターから逃がす際に、死亡したと。

　不思議と、涙は出なかった。納得があった。
　父は、彼女を逃がすために、銃声が鳴り響く中、機体の中へと彼女を押し込んだのだ。
　だから、たぶん、死んでいたと、心の片隅で納得していたのだ。

　ふと、墓石を見つめていると、気づいた事がある。墓石には、父と、祖父母と、遠い祖先の名前があったが、それとは別に、白く目立つ傷が付いていた。

　しばし思索を巡らせ、ああ、と納得する。
　私だ。
　あの時、父と共に天に召されたはずだったのだ。だが、お前はまだ土の下にはいないのだと示すように、名を削り取られたのだ。

　胸の内を隙間風が吹いた気がする。
　煙草を取り出して、ライターの火を掲げる。湿気からか時間はかかったが、やがて火が灯り、煙を燻らせる。
　一息喫して、墓の上に置いた。


　大粒の雨が、ぽつり、ぽつりと降り始めていた。

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　煙草の本数が増えた気がする。
　お金も無いから、嗜好品は抑えないといけないのだけれど、珈琲と本だけは削れない。
　でも、あまり煙草を吸う習慣は無かったはずなのだけれど気がついたらハイドラ関係の費用以外で、ランクインしかねない程の出費を占め始めている。

　なんででしょうねえ。

　なんでだろうねえ。

　自問自答するけれど、答えはわかりきっている。

　煙草の匂いは父の匂いだから。吸っていると、そこにいる気がする。


　忘れたくないのだろうと、そう思う。

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それは大きな倉庫。―――ただし外部から何か引きちぎられたような跡がそこかしこに見て取れます。

外からひとまずの補修がされており、ハイドラの整備施設などが備え付けられているようです。

また、倉庫の脇には、油臭いパイプベッドが備え付けられたバラックが存在しており、時折、珈琲の香りが漂ってきます。
「……もうちょっと居住性高めましょうか。」



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・射撃特価ユニオンです。

・一応参加自由ですです。