第6週目 Lloydの一週間
◆日記
※Eno46のB面
急速に五体が縮んでいく奇妙な感覚を味わいながら、操縦棺の中で目を開く。座るというより収まるという表現が実際に近いシートから体を剥がし、闇の中手を伸ばして棺の蓋を探し求めると、いつの間にかハッチの前に立っている自分を認める。全く気分が悪かった。ひょっとすると、自分という存在はWHが本体で、今立っている体はそこから切り離された端末なのではないかと思う程だった。勿論事の実際に興味は無いし、使えるならばどうでもよかった。この体もWHもその点では同じだった。
不快感を弄ぶ余裕を有り難く思いながら、ハッチを開けて首を巡らせる。ちょうどジルがAnubisから降りたところだった。努めて朗らかに声をかけた。
「お疲れさま、ジル。問題はないかい?」
「うん、問題無し!リーもお疲れさま」
赤い少女の笑顔に酷く安らぎを覚えている自身に気付いた。この情動には何の疑念も覚えなかった。人には何か無条件で信じられるものが必要だ。とてもではないが、自身をその例外に置く勇気は無かった。
†
呼び鈴に応じてジルが玄関へと向かった。すぐ戻ってきた傍らに少女が一人付いてきている。ファティマだった。意外ではなかったが、罰の悪さはあった。多忙にかまけ、彼女の依頼を後回しにしていたからだった。
「レッドさん!」
声の響きに含まれるニュアンスに違和感を覚えた。怪訝に思っているうちに、危うく躓きそうになりながら駆けてきたファティマがレッドの手を奪うように握ってきた。ファティマの目に不安の色が走っていた。
「……違う」
怯えたような声音に、大凡の疑問が氷解した。この娘は望みを果たす手段とは別のところを求めている。言語化できぬまま納得していた。
「レッドさん、腕、どうしたの?」
「腕?わからないんだ。気づいたらこうなってた」
「髪、染めたの?」
「そういえば前と違うな」
「じゃあ、レッドさんは、レッドさんじゃなくなっちゃったの?」
「いや、君の言うところのレッドで間違いないよ」
「ジュネリアさんと来たこと、覚えてる?」
「勿論。随分と偉そうな口を利いたっけ」
「説明書渡したの、覚えてる?」
「うん。俺は読まなかった」
「お手紙送ってくれたの、覚えてる?」
「覚えてる。思えば何もかも中途だった。本当に申し訳ない、おまけにお詫びも遅くなってしまって」
急かすような矢継ぎ早の問いに、慎重に、不自然に間の空かぬよう答える内に、急速に理解が追いついてきた。自分と似たようなものだ。何も無いところに、役目と甘さの縄を垂らす。いずれそれで縛り取られようと、溺れる者には救いに他ならない。
ファティマが、胸に倒れかかるように抱きついてきた。ハーブを教えてくれた主任、趣味の愉しみ方を指南してくれた整備士、カワサキの皆々様。誠に恥ずべき事に、貴方がたの『たらし』の教育指導はどうやら俺の中にも受け継がれていたようです。
ジルの方を見やる。余程情けない顔をしていたらしい、励ますように目配せをしていた。手が震えそうだった。誤魔化すようにファティマの背中を軽く擦った。
†
「ええと……レッドさんが、帰ってきた、なら、お願いしたいこと、あって……ジルさんにも、協力を、お願いしたいんです」
ようやく離れたファティマに椅子と茶を勧め、一息つけたところで要件を切り出してもらった。
「私は……私にできる事なら喜んで」
「俺は勿論。でも、ジルには一人で苦労させたし、可能な限り俺一人で済ませたい」
隣に座ったジルは律儀に頷いたが、男はそうもいかなかった。ジルを巻き込んだのは、自分が死んだ際にファティマの協力を取り付けるための方便に過ぎない。双方に罪悪感はあったが、所詮優先順位の問題であった。
「ドラゴネット社を、消し飛ばしてください。わたしのお願いは、それだけです」
ファティマの訴える希望に、男は苦労して無反応を取り繕った。ティーカップの液面で透き通る緑色が踊っていた。
「今後のこともあるし、聞いておこう。ジルは、この願いをどう思う?」
「企業を消し飛ばす、か……。ロクでもない企業なのは間違いないけど……実際のところ、どれくらいなんとかなりそう?」
少女二人がやる気に満ち溢れている様に気が遠くなった。良くもまあこんな物騒を平気で口にできるものだと恐ろしくなった。つまりは環境と教育がいけないのだ。
「できはするよ。その後がどうにもならない」
自業自得を自嘲している場合ではなかった。教育と経験に遅過ぎる事はあれどそれは後回しにする理由にならない。それに、こんな無謀にジルを加担させた責任を取る必要がある。
茶を啜って時間を稼ぐ。苦労して取捨選択し、必須と思えるところを口にした。
「個人で企業を滅ぼすっていうのは大変なことなんだ。企業というものは人体と関係で他と繋がる血肉の歯車だ。
一人二人ならまだいい。でも、暴力を以て一企業を損ねてしまったら、隣り合う歯車は黙っていられる筈もない。
際限無く肥大化する防衛反応を抑える特効薬は企業同士の経済的了解に基づく調整しか有り得ない」
つまり、ろくでもないことになる。ファティマの緊張が酷く強まったのがわかった。ジルが咎めるように目を向けてくるが、努めて無視した。身を以て知る事実を開帳せずにはいられなかった。少なくともカワサキはそうやって滅んだ。彼等は個人ではないが、孤立していた。その責任から自身を切り離す事等到底できなかった。
「……それでも、もう、これ以上、ドラゴネットって名前を、聞きたくないんです。
企業は残して、あそこにいる人を全て……殺し、たとしても、ドラゴネットって、名前は消えない」
絞り出すようなファティマの声は真剣であり、悲愴だった。男と違って安易な思い等欠片も無いに違いない。決して何かを軽んじているのではない。ただ重んじているが故なのだろう。
「こうやって、名前を口に出すのも、いやなんです……!
いやだからこそ、あそこが存在していた証拠を、全て消し飛ばしたいんです」
目を瞑り頭を振るファティマに小さく頷いた。彼女は既に攻撃を受けている。自衛。自分と何ら変わりない。誰もが生きるために戦っている。単にそのやり方が違うだけなのだ。
「その結果、わたしが、もっと悪い目に遭っても、かまいません。
ここに来た時点で、脱走っていう罪を犯してる悪い子、ですし……」
「いいよ。それでいこう」
もういいだろう、と考え遮った。悪い子云々等は知った事ではないが、少なくとも自身のリスクは了解を得た。後はどう解消するかを考えればいい。
「できれば俺達の行く末も心配して欲しいけど、ね。君の気持ちが固まってるならそれでいい。
いや、君はそれだけのことをしてくれた。俺も約束した。ならば否応は無いよ」
「あ……ごめんなさい、わたし、自分のことばっかり……」
「助けを求める時はそれでいい。方法も無いわけじゃない、なんとかするよ」
にべもなく切り捨てる。自分が死ぬような戦場に招く奴の事を心配する必要は無い。ただ考慮していればいい。利益が損失を上回る限り、多くの悪行は看過される(全てではない)。そして優先されるのは常に自身の利益。
「となると、消すのはドラゴネットという企業全体となるけど。君と似た立場の者はどうする?」
「それは、もちろん……VLDとして、洗脳されていた子たちも、救いたいです」
即答だった。目標を明確にするための確認だったため驚きは無い。無論、諸共に鏖殺した方が楽ではあったが。
「今考えているプラン、こうです。まず、わたしが遠くから、ドラゴネットにハッキングを仕掛ける。
セキュリティを突破できたら、レッドさんが襲撃する。その隙に、ジルさんが捕まってるみんなを助ける。
VLDにされた子たちは、社屋の奥の、小さな寮で暮らしてるから、二手に分かれれば、いける、って思ったんだけど……」
へえ、と腹の中で感嘆していた。大まかなビジョン、こちらの気になるであろう点を少なからず押さえられている。特に電子制御系を掌握し得るというのは僥倖だった。彼我戦力比の安易な予想は頂けないが、実際と矛盾はないので文句は無い。
「でも、これじゃ、レッドさんの、レッドさんだけで済ませたい、って意見と、食い違って……」
ファティマの気遣いは敢えて無視した。思考を完全に攻撃的なものに切り替えている。手持ちの材料と環境から即座に行動方針を固めた。
「電子支援が得られるなら有り難い、それなら救助はジルに任せてもいい。頼めるか?」
「私は最初から手伝うつもりだったから……でもいいの?」
「うん。足がつかないようにする。攻撃は俺だけで十分だ。
ファティマには追って支援用の設備と工作の内容を届ける、ブリーズは使うな。
作戦終了後直ちに設備を遺棄して離脱すること。移動はジュネリアにも手伝わせる。」
要は、俺の得意なやり方でやってしまえばいいのだ。誰がやったかわからなくするのは困難だが、生贄の羊に全てを擦りつけるのはそこまで難しいものではない。そして生贄を喜んで引き受けるであろう連中には大いに心当たりがあった。
うん、と頷くジルに一拍遅れてファティマが続いた。気分の切替に付き合わせるのもどうかと思われたが、少なくとも自信があるように映る筈だった。
「さて、この話は十分かな。ところで戦場から直行だろう、疲れてないかい?食事は」
「い、いえ、大丈夫です……ありがとう、ございました」
ファティマは妙に足早に去っていった。気に留める余裕は無かった。何と言っても彼は熱心なテロリストだった。また暫くジルと過ごす時間が減る事を気に病んでいた。
※ユニオンに続く
急速に五体が縮んでいく奇妙な感覚を味わいながら、操縦棺の中で目を開く。座るというより収まるという表現が実際に近いシートから体を剥がし、闇の中手を伸ばして棺の蓋を探し求めると、いつの間にかハッチの前に立っている自分を認める。全く気分が悪かった。ひょっとすると、自分という存在はWHが本体で、今立っている体はそこから切り離された端末なのではないかと思う程だった。勿論事の実際に興味は無いし、使えるならばどうでもよかった。この体もWHもその点では同じだった。
不快感を弄ぶ余裕を有り難く思いながら、ハッチを開けて首を巡らせる。ちょうどジルがAnubisから降りたところだった。努めて朗らかに声をかけた。
「お疲れさま、ジル。問題はないかい?」
「うん、問題無し!リーもお疲れさま」
赤い少女の笑顔に酷く安らぎを覚えている自身に気付いた。この情動には何の疑念も覚えなかった。人には何か無条件で信じられるものが必要だ。とてもではないが、自身をその例外に置く勇気は無かった。
†
呼び鈴に応じてジルが玄関へと向かった。すぐ戻ってきた傍らに少女が一人付いてきている。ファティマだった。意外ではなかったが、罰の悪さはあった。多忙にかまけ、彼女の依頼を後回しにしていたからだった。
「レッドさん!」
声の響きに含まれるニュアンスに違和感を覚えた。怪訝に思っているうちに、危うく躓きそうになりながら駆けてきたファティマがレッドの手を奪うように握ってきた。ファティマの目に不安の色が走っていた。
「……違う」
怯えたような声音に、大凡の疑問が氷解した。この娘は望みを果たす手段とは別のところを求めている。言語化できぬまま納得していた。
「レッドさん、腕、どうしたの?」
「腕?わからないんだ。気づいたらこうなってた」
「髪、染めたの?」
「そういえば前と違うな」
「じゃあ、レッドさんは、レッドさんじゃなくなっちゃったの?」
「いや、君の言うところのレッドで間違いないよ」
「ジュネリアさんと来たこと、覚えてる?」
「勿論。随分と偉そうな口を利いたっけ」
「説明書渡したの、覚えてる?」
「うん。俺は読まなかった」
「お手紙送ってくれたの、覚えてる?」
「覚えてる。思えば何もかも中途だった。本当に申し訳ない、おまけにお詫びも遅くなってしまって」
急かすような矢継ぎ早の問いに、慎重に、不自然に間の空かぬよう答える内に、急速に理解が追いついてきた。自分と似たようなものだ。何も無いところに、役目と甘さの縄を垂らす。いずれそれで縛り取られようと、溺れる者には救いに他ならない。
ファティマが、胸に倒れかかるように抱きついてきた。ハーブを教えてくれた主任、趣味の愉しみ方を指南してくれた整備士、カワサキの皆々様。誠に恥ずべき事に、貴方がたの『たらし』の教育指導はどうやら俺の中にも受け継がれていたようです。
ジルの方を見やる。余程情けない顔をしていたらしい、励ますように目配せをしていた。手が震えそうだった。誤魔化すようにファティマの背中を軽く擦った。
†
「ええと……レッドさんが、帰ってきた、なら、お願いしたいこと、あって……ジルさんにも、協力を、お願いしたいんです」
ようやく離れたファティマに椅子と茶を勧め、一息つけたところで要件を切り出してもらった。
「私は……私にできる事なら喜んで」
「俺は勿論。でも、ジルには一人で苦労させたし、可能な限り俺一人で済ませたい」
隣に座ったジルは律儀に頷いたが、男はそうもいかなかった。ジルを巻き込んだのは、自分が死んだ際にファティマの協力を取り付けるための方便に過ぎない。双方に罪悪感はあったが、所詮優先順位の問題であった。
「ドラゴネット社を、消し飛ばしてください。わたしのお願いは、それだけです」
ファティマの訴える希望に、男は苦労して無反応を取り繕った。ティーカップの液面で透き通る緑色が踊っていた。
「今後のこともあるし、聞いておこう。ジルは、この願いをどう思う?」
「企業を消し飛ばす、か……。ロクでもない企業なのは間違いないけど……実際のところ、どれくらいなんとかなりそう?」
少女二人がやる気に満ち溢れている様に気が遠くなった。良くもまあこんな物騒を平気で口にできるものだと恐ろしくなった。つまりは環境と教育がいけないのだ。
「できはするよ。その後がどうにもならない」
自業自得を自嘲している場合ではなかった。教育と経験に遅過ぎる事はあれどそれは後回しにする理由にならない。それに、こんな無謀にジルを加担させた責任を取る必要がある。
茶を啜って時間を稼ぐ。苦労して取捨選択し、必須と思えるところを口にした。
「個人で企業を滅ぼすっていうのは大変なことなんだ。企業というものは人体と関係で他と繋がる血肉の歯車だ。
一人二人ならまだいい。でも、暴力を以て一企業を損ねてしまったら、隣り合う歯車は黙っていられる筈もない。
際限無く肥大化する防衛反応を抑える特効薬は企業同士の経済的了解に基づく調整しか有り得ない」
つまり、ろくでもないことになる。ファティマの緊張が酷く強まったのがわかった。ジルが咎めるように目を向けてくるが、努めて無視した。身を以て知る事実を開帳せずにはいられなかった。少なくともカワサキはそうやって滅んだ。彼等は個人ではないが、孤立していた。その責任から自身を切り離す事等到底できなかった。
「……それでも、もう、これ以上、ドラゴネットって名前を、聞きたくないんです。
企業は残して、あそこにいる人を全て……殺し、たとしても、ドラゴネットって、名前は消えない」
絞り出すようなファティマの声は真剣であり、悲愴だった。男と違って安易な思い等欠片も無いに違いない。決して何かを軽んじているのではない。ただ重んじているが故なのだろう。
「こうやって、名前を口に出すのも、いやなんです……!
いやだからこそ、あそこが存在していた証拠を、全て消し飛ばしたいんです」
目を瞑り頭を振るファティマに小さく頷いた。彼女は既に攻撃を受けている。自衛。自分と何ら変わりない。誰もが生きるために戦っている。単にそのやり方が違うだけなのだ。
「その結果、わたしが、もっと悪い目に遭っても、かまいません。
ここに来た時点で、脱走っていう罪を犯してる悪い子、ですし……」
「いいよ。それでいこう」
もういいだろう、と考え遮った。悪い子云々等は知った事ではないが、少なくとも自身のリスクは了解を得た。後はどう解消するかを考えればいい。
「できれば俺達の行く末も心配して欲しいけど、ね。君の気持ちが固まってるならそれでいい。
いや、君はそれだけのことをしてくれた。俺も約束した。ならば否応は無いよ」
「あ……ごめんなさい、わたし、自分のことばっかり……」
「助けを求める時はそれでいい。方法も無いわけじゃない、なんとかするよ」
にべもなく切り捨てる。自分が死ぬような戦場に招く奴の事を心配する必要は無い。ただ考慮していればいい。利益が損失を上回る限り、多くの悪行は看過される(全てではない)。そして優先されるのは常に自身の利益。
「となると、消すのはドラゴネットという企業全体となるけど。君と似た立場の者はどうする?」
「それは、もちろん……VLDとして、洗脳されていた子たちも、救いたいです」
即答だった。目標を明確にするための確認だったため驚きは無い。無論、諸共に鏖殺した方が楽ではあったが。
「今考えているプラン、こうです。まず、わたしが遠くから、ドラゴネットにハッキングを仕掛ける。
セキュリティを突破できたら、レッドさんが襲撃する。その隙に、ジルさんが捕まってるみんなを助ける。
VLDにされた子たちは、社屋の奥の、小さな寮で暮らしてるから、二手に分かれれば、いける、って思ったんだけど……」
へえ、と腹の中で感嘆していた。大まかなビジョン、こちらの気になるであろう点を少なからず押さえられている。特に電子制御系を掌握し得るというのは僥倖だった。彼我戦力比の安易な予想は頂けないが、実際と矛盾はないので文句は無い。
「でも、これじゃ、レッドさんの、レッドさんだけで済ませたい、って意見と、食い違って……」
ファティマの気遣いは敢えて無視した。思考を完全に攻撃的なものに切り替えている。手持ちの材料と環境から即座に行動方針を固めた。
「電子支援が得られるなら有り難い、それなら救助はジルに任せてもいい。頼めるか?」
「私は最初から手伝うつもりだったから……でもいいの?」
「うん。足がつかないようにする。攻撃は俺だけで十分だ。
ファティマには追って支援用の設備と工作の内容を届ける、ブリーズは使うな。
作戦終了後直ちに設備を遺棄して離脱すること。移動はジュネリアにも手伝わせる。」
要は、俺の得意なやり方でやってしまえばいいのだ。誰がやったかわからなくするのは困難だが、生贄の羊に全てを擦りつけるのはそこまで難しいものではない。そして生贄を喜んで引き受けるであろう連中には大いに心当たりがあった。
うん、と頷くジルに一拍遅れてファティマが続いた。気分の切替に付き合わせるのもどうかと思われたが、少なくとも自信があるように映る筈だった。
「さて、この話は十分かな。ところで戦場から直行だろう、疲れてないかい?食事は」
「い、いえ、大丈夫です……ありがとう、ございました」
ファティマは妙に足早に去っていった。気に留める余裕は無かった。何と言っても彼は熱心なテロリストだった。また暫くジルと過ごす時間が減る事を気に病んでいた。
※ユニオンに続く
NEWS
本日のニュースですついに、マテリアルベルト発動機が先導するタワー侵攻作戦が始まりました
これは、タワーに眠る遺産を手にいれ、やがて来る大洪水の避難場所として活用するというものです
しかし、北の遺跡攻略で戦力を消耗した勢力は多く
タワー侵攻は困難と見られています
「タワーの建設目的は明らかです。これは、やがて訪れる世界の水没に耐えるべく建設されていました」
「しかし、いま、危機を迎える我々をなぜ拒むのか――」
ヒルコ教団の巫女『ネコ』からのメッセージ 「魔王『セワ』との対話には、慎重になる必要がある」 |
ヒルコ教団の巫女『ネコ』からのメッセージ 「先の文明は、彼との対話に失敗し、3000体に及ぶ人造神がコントロールを奪われたという」 |
ヒルコ教団の巫女『ネコ』からのメッセージ 「そして人造神ドゥルガーは、世界を滅ぼすため、残像領域の空を舞った。崩壊の始まりだった」 |
ヒルコ教団の巫女『ネコ』からのメッセージ 「なぜか、それは……『セワ』の心には深い悲しみがあったからだ。そして、先の文明の見せた光景は、彼の悲しみを癒すものではなかった」 |
ヒルコ教団の巫女『ネコ』からのメッセージ 「先の文明は、彼の理想とする世界ではなかった。それだけだ。それが、ヒルコ教団に伝わる影の歴史の全てだ」 |
デバステイター・センチネル≪ΜΕΛΠΟΜΕΝΗ≫ 「世界が揺らいでいる……貴様たちは、なぜあがく? なぜ、破滅へと向かう?」 |
デバステイター・センチネル≪ΜΕΛΠΟΜΕΝΗ≫ 「私は世界を救命する。貴様たちは護られていればいい。ただそれだけなのに」 |
デバステイター・センチネル≪ΜΕΛΠΟΜΕΝΗ≫ 「何が貴様たちを突き動かしているのだ。平穏な日々を捨てて、なぜ戦う?」 |
デバステイター・センチネル≪ΜΕΛΠΟΜΕΝΗ≫ 「私には、使命と……領域拡散精神遊離環がある。貴様には、何があるというのだ」 |
◆訓練
適性の訓練をしました適性が59上昇した
ヒルコ教団とスポンサー契約を更新しました!!
生体電池手術成功!!
ロイドは複製試作偽肢『アガトラム』Mk.Iを408cで購入した!!
ヒルコ教団とスポンサー契約を更新しました!!
ヒルコ教団とスポンサー契約を更新しました!!
ロイドはクゥル・ツテクの『自我』を1056cで購入した!!
金塊を200cに換金した!!
金塊を200cに換金した!!
金塊を200cに換金した!!
金塊を200cに換金した!!
金塊を200cに換金した!!
金塊を200cに換金した!!
金塊を200cに換金した!!
金塊を200cに換金した!!
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◆作製
作製しようとしたが必要資金が不足したため、無料で頑張って作製しました
作成時補助発動! 加重!! パーツ重量が 58 増加!!
作成時補助発動! 加重!! パーツ重量が 58 増加!!
呪いの人形29と呪いの人形29を素材にしてUNLEASHEDFIREを作製した!!
◆戦闘システム決定
バーサーク に決定!!
◆アセンブル
脚部2にハイマットフルバーストを装備した
スロット3に複製試作偽肢『アガトラム』Mk.Iを装備した
スロット4にUNLEASHEDFIREを装備した
スロット5にクゥル・ツテクの『自我』を装備した
スロット6にリーイン・カーネイションを装備した
スロット7にzawerzdrr【無繋呪肢体】を装備した
スロット8に仆歩を装備した
スロット9にリーイン・カーネイションを装備した
スロット10にリーイン・カーネイションを装備した
スロット11にzawerzdrr【無繋呪肢体】を装備した
◆僚機設定
ジル・スチュアートとバディを結成した!!
◆意思表示設定
意志設定……生存優先
◆ミッション
ミッション設定……ミッションB
ユニオン活動
毛皮の無い灰狼の活動記録
「また外出が多くなると思う」
ファティマを見送り扉を閉めると同時に、ジルへと向き直った男は口を開いた。素っ気ない言葉とは裏腹に、恐懼そのものといった態度だった。男は平時木で鼻を括ったような態度を示すことが多かったが、つい先日ロイドという名を得て戻ってきてからはジルに対して以前からは考えられないほど素直な態度で接してくるようになっていた。
「ううん、私だってファティマさんのこと知ってたらほっとけないと思うし。あっさり言ってたけど、準備大変なんでしょ?」
5年の同居生活で男の用いる表現方法に精通していたジルは、男の態度と言葉からその意味するところを見出し、あっさりと逆算してみせた。男はますます情けない顔になり、後頭部をかいた。少女の示した配慮が全くの図星であったからだった。
元々年齢からすると異常なほど頭脳の回転が速い上、やはり環境ゆえと言うべきか、自身を案ずる者に対し常に(全く年齢不相応に)心配させぬよう振る舞ってきたため、ジルはこうした時読心術にも似た的確な理解を示すことが時折あった。少なくとも男は彼女の示す態度についてそう捉えていた。かつてはそれを好ましい成長だと思っていた(状況に対する洞察力は時に物理的能力よりも遥かに生存性に寄与する)が、今はむしろ申し訳ないと感じることが多くなっていた。彼女の心配りが全く自身の拙さ故に発揮されるようになっていたためだった。
「ごめん。ミッションに影響しない範囲で手伝ってもらうかもしれない。勿論君が良ければだけれども」
「もちろん!あまり遠慮しないで、その……リーが頼ってくれるなんてめったにないんだし」
実際にはジルの手を借りるまでもない。男なりの精一杯の甘言のつもりだった。にこりと笑った後、少し言葉に詰まったジルの様子が気にかかっていた。
†
男は自室のベッドに腰掛けたまま苦悩していた。その背後では男が何よりも優先する少女が背中を向けて毛布を被っていた。一言も口を聞いてはくれない。弱り切っていた。
つい先刻までは殆ど平常通りだった。ジルと二人で少し多めの夕食(二人共それを必要としないが、慣例として戦闘行動前は食事を減らしている)を摂り、食後のデザートを楽しみ、ジルが長湯している間に男は今後の準備を進め、ジルが髪を乾かしているうちに男はざっと体を洗い、とにかく常と変わらぬ時間の過ごし方をしていたはずだった。
テーブルランプの明かりで作業を再開していた男の部屋に、ジルが寝間着姿で乗り込んできたのだった。ノックも無く、滅多に見せることのない仏頂面だった。どうかしたのかと訪ねても、別に、とぶすりと言ったきり男のベッドに潜り込んでしまった。
手荒く拙かった。明らかに機嫌を損ねている。何に?少なくとも男に原因があることは間違いなかった。彼女は全く忍耐強く、些かどうかと思うほど親切心とでも呼ぶべきものを持ち合わせていて、つまり理由もなく不機嫌を他人に見せるようなことは一切無かった。彼女がそういった態度を見せるのは、ほぼ常に男が犯した過ちを詫びた時だった。
何が原因か。全く見当もつかなかった。男の余りにも浅い経験則の限界だった。ファティマとのやり取りやその後の態度に問題があったとは思えない。彼女はこれまで、男の示すものに得心しかねた時は速やかに問い質してきた。男も極力そうしてきた。お互いの主義主張に乖離があることを暗黙のうちに了解しつつも、その限界まで否定することは決して無かった。少なくとも男はそうしていたつもりだった。
秒針の立てる音が妙に煩い。元々こういった思索を全く得意としないため、酷く苦痛を覚えていた。原因の見えない曖昧な結果に対しては何の手立ても思いつかないのだった。だからと言って諦めはつかなかった。他の誰かならとうに投げ出していたが、今機嫌を損ねているのは他でもないジルだった。男にとってそれを諦めることは自殺に他ならない。
額に熱を帯びるほど悩んでいるうちに、男の思考は徐々に妄想とでも言うべきものに変わっていった。ジルの思惑、その行動が期待するところを空想と重ね合わせようとし始めていた。言うまでもなく危険な徴候であった。平時の男であれば空想が現実に容喙する等、と嘲笑すらしただろう。しかし同時に、どれほど愚かであっても具体的な結論と行動方針を有することは無策に勝るとも考えていた。ようやくのところで口を開いた。自棄に近い気分だった。
「その、なんというか、ごめん……」
「………………私こそ、ごめん」
その消え入りそうな小さな声は、男に鼓動が停止するほどの衝撃を齎した。男のそれよりも遥かに沈痛な声音であった。
「君が謝る必要だけは無い」
全く反射的な反駁だった。辛うじて聞き取れるような小声だったが、嗜めるというよりは叱り付けると言ったほうが適切な響きだった。
ごめん、と続けてから、壁を向いて横になっているジルの肩の辺りをそっと撫でた。毛布から白い手が伸び出て、獲物に噛み付くような俊敏さで指を絡めてきた。
ああもう、潰れたままの心臓が更に締め付けられるような思いだった。男の妄想は現実と乖離していなかったと気づいたからだった。ジルの所作は息を切らせて駆け込んできたファティマのそれとよく似ていた。思慕の情。男がかつて平穏を主菜に貪り読んでいた創作の一節に実によく似た情景だった。男女の情についての失敗談とでも呼ぶべきものだった。男はついぞそこから具体的な対策を見出すことはできなかった。
しがみつくように掴まれた手をそのままに、男もベッドに潜り込んだ。逆の手で恐る恐るジルの頭を浮かせて、そのまま腕を滑り込ませる。びくりとした他に抵抗は無かった。そのまま抱き締める。絡められていた手がおずおずと引っ張り込まれ、ジルの胸元へと押し付けられた。
「君が謝る必要だけは無いんだ。遠慮する必要も無い。無遠慮で過ぎた高望みだとはわかっているが、君には思うままに望んで欲しいんだ」
そっと、ただひたすらそっと囁いた。事の発端が何を偉そうな口を、と心中で罵倒の限りを尽くしてはいるが、こうでもしなければこの優しい娘は自らの黒いものをただ己の内に溜め込んでしまうだろうと恐れていた。それだけは嫌だった。男は全く無責任にジルの安息だけを願っていた。
ジルはますます強く男の手を胸へと押し当てた。柔らかい肉と骨の奥から頼りなく鼓動が伝わっていた。訳も無く安堵している自身に男は腹を立てていた。やがてジルはひっそりと口を開いた。
「…………嫌なこと、考えてました」
「聞かせてもらっても?」
「ファティマさんが、リーに抱きついた時。 ……その、リーが、わたしから離れていっちゃったような気がして……
リーが、わたしじゃない女の子にやさしくしてるの見て。……嫌だなって、思ってました」
か細く途切れ途切れの言葉に、男は一々頷いて傾聴していた。ジルの頭のすぐ後ろなので、それだけで伝わっていた。
「たまたまファティマさんが酷い目にあってたから、頼み事しにいった側のリーがやさしくしたんだって……
リーならそうするって、わかってたんだけど、 ……なにか、苦しかった」
「うん」
「ごめん…………困るよね、こんなこと言ったら」
「困りはする。君が一点の非も無いのに酷く苦しんだことと、そんな事態を招いた自分の間抜けさに」
本心からの言葉だった。男は、これまでの経緯にジルの責を認めることができなかった。
「……妙に好意を持たれてしまったのは、完全に俺の失敗だ。本当にごめん。
約束もしたし、俺も助けてもらってる。ファティマに協力することは止められない」
「……うん、わかってる」
「だけど、どんなことがあっても。俺がいたいのは君の元だ。他は最悪どうでもいい。君かそれ以外かなら、絶対に君を選ぶ」
死んでも君の側にいたい。そう言いたい衝動を辛うじて抑えていた。苦しめてばかりの俺のこんな無責任な言葉が、果たしてどれほどの誠意になるのか。自身の無能に脳内で無数の悪罵を投げつけていた男の手が、更に強く抱き締められた。柔らかい肉が押し潰されるような感触があった。ジルの耳は暗い部屋の中でその髪と殆ど混ざり合ってしまうほど赤くなっていた。自身の不甲斐なさが余りにも呪わしく感じられた。
「俺が君の好意に見合うとは全然思えない……ごめん、弱音だな。精一杯努力する。君が少しでも幸福を感じられるように」
本当にそうか、貴様如きにそんなことができるものか。
「…………やだ。リーも、幸せになって」
「わかった。君と一緒に幸せになる」
心底からの疑念を全く裏切って、口から言葉が突いて出た。そんな馬鹿なと思っているうちに、ジルは身を捩り男へと向き直っていた。泣き腫らしたように赤くなった目元に胸が酷く痛んだ。
男の首にしがみつくように腕を回し、目を閉じ柔らかい唇で男の唇を塞いでいた。柔らかい体を可能な限り男へと押し付けてくる。誰にも教わらないまま、背中に回した腕で抱き締め返していた。安らぎと呼ぶには余りにも強烈な情動が互いの体の接点から交換されるのを感じていた。或いは、これを幸福と呼ぶのかもしれなかった。
†
翌朝、ジルは全く平常通りの態度で振る舞っていた。男は朝食の片付けを終えると共に市街への外出を告げた。
常の通り玄関口まで見送りに来たジルを特に考えもなく抱き締めていた。報酬系を刺激された獣のような自然さだった。ジルは驚いたが、すぐにあやすように回した腕で男の背中を撫で、早めに帰ってきてねとだけ口にした。
ファティマを見送り扉を閉めると同時に、ジルへと向き直った男は口を開いた。素っ気ない言葉とは裏腹に、恐懼そのものといった態度だった。男は平時木で鼻を括ったような態度を示すことが多かったが、つい先日ロイドという名を得て戻ってきてからはジルに対して以前からは考えられないほど素直な態度で接してくるようになっていた。
「ううん、私だってファティマさんのこと知ってたらほっとけないと思うし。あっさり言ってたけど、準備大変なんでしょ?」
5年の同居生活で男の用いる表現方法に精通していたジルは、男の態度と言葉からその意味するところを見出し、あっさりと逆算してみせた。男はますます情けない顔になり、後頭部をかいた。少女の示した配慮が全くの図星であったからだった。
元々年齢からすると異常なほど頭脳の回転が速い上、やはり環境ゆえと言うべきか、自身を案ずる者に対し常に(全く年齢不相応に)心配させぬよう振る舞ってきたため、ジルはこうした時読心術にも似た的確な理解を示すことが時折あった。少なくとも男は彼女の示す態度についてそう捉えていた。かつてはそれを好ましい成長だと思っていた(状況に対する洞察力は時に物理的能力よりも遥かに生存性に寄与する)が、今はむしろ申し訳ないと感じることが多くなっていた。彼女の心配りが全く自身の拙さ故に発揮されるようになっていたためだった。
「ごめん。ミッションに影響しない範囲で手伝ってもらうかもしれない。勿論君が良ければだけれども」
「もちろん!あまり遠慮しないで、その……リーが頼ってくれるなんてめったにないんだし」
実際にはジルの手を借りるまでもない。男なりの精一杯の甘言のつもりだった。にこりと笑った後、少し言葉に詰まったジルの様子が気にかかっていた。
†
男は自室のベッドに腰掛けたまま苦悩していた。その背後では男が何よりも優先する少女が背中を向けて毛布を被っていた。一言も口を聞いてはくれない。弱り切っていた。
つい先刻までは殆ど平常通りだった。ジルと二人で少し多めの夕食(二人共それを必要としないが、慣例として戦闘行動前は食事を減らしている)を摂り、食後のデザートを楽しみ、ジルが長湯している間に男は今後の準備を進め、ジルが髪を乾かしているうちに男はざっと体を洗い、とにかく常と変わらぬ時間の過ごし方をしていたはずだった。
テーブルランプの明かりで作業を再開していた男の部屋に、ジルが寝間着姿で乗り込んできたのだった。ノックも無く、滅多に見せることのない仏頂面だった。どうかしたのかと訪ねても、別に、とぶすりと言ったきり男のベッドに潜り込んでしまった。
手荒く拙かった。明らかに機嫌を損ねている。何に?少なくとも男に原因があることは間違いなかった。彼女は全く忍耐強く、些かどうかと思うほど親切心とでも呼ぶべきものを持ち合わせていて、つまり理由もなく不機嫌を他人に見せるようなことは一切無かった。彼女がそういった態度を見せるのは、ほぼ常に男が犯した過ちを詫びた時だった。
何が原因か。全く見当もつかなかった。男の余りにも浅い経験則の限界だった。ファティマとのやり取りやその後の態度に問題があったとは思えない。彼女はこれまで、男の示すものに得心しかねた時は速やかに問い質してきた。男も極力そうしてきた。お互いの主義主張に乖離があることを暗黙のうちに了解しつつも、その限界まで否定することは決して無かった。少なくとも男はそうしていたつもりだった。
秒針の立てる音が妙に煩い。元々こういった思索を全く得意としないため、酷く苦痛を覚えていた。原因の見えない曖昧な結果に対しては何の手立ても思いつかないのだった。だからと言って諦めはつかなかった。他の誰かならとうに投げ出していたが、今機嫌を損ねているのは他でもないジルだった。男にとってそれを諦めることは自殺に他ならない。
額に熱を帯びるほど悩んでいるうちに、男の思考は徐々に妄想とでも言うべきものに変わっていった。ジルの思惑、その行動が期待するところを空想と重ね合わせようとし始めていた。言うまでもなく危険な徴候であった。平時の男であれば空想が現実に容喙する等、と嘲笑すらしただろう。しかし同時に、どれほど愚かであっても具体的な結論と行動方針を有することは無策に勝るとも考えていた。ようやくのところで口を開いた。自棄に近い気分だった。
「その、なんというか、ごめん……」
「………………私こそ、ごめん」
その消え入りそうな小さな声は、男に鼓動が停止するほどの衝撃を齎した。男のそれよりも遥かに沈痛な声音であった。
「君が謝る必要だけは無い」
全く反射的な反駁だった。辛うじて聞き取れるような小声だったが、嗜めるというよりは叱り付けると言ったほうが適切な響きだった。
ごめん、と続けてから、壁を向いて横になっているジルの肩の辺りをそっと撫でた。毛布から白い手が伸び出て、獲物に噛み付くような俊敏さで指を絡めてきた。
ああもう、潰れたままの心臓が更に締め付けられるような思いだった。男の妄想は現実と乖離していなかったと気づいたからだった。ジルの所作は息を切らせて駆け込んできたファティマのそれとよく似ていた。思慕の情。男がかつて平穏を主菜に貪り読んでいた創作の一節に実によく似た情景だった。男女の情についての失敗談とでも呼ぶべきものだった。男はついぞそこから具体的な対策を見出すことはできなかった。
しがみつくように掴まれた手をそのままに、男もベッドに潜り込んだ。逆の手で恐る恐るジルの頭を浮かせて、そのまま腕を滑り込ませる。びくりとした他に抵抗は無かった。そのまま抱き締める。絡められていた手がおずおずと引っ張り込まれ、ジルの胸元へと押し付けられた。
「君が謝る必要だけは無いんだ。遠慮する必要も無い。無遠慮で過ぎた高望みだとはわかっているが、君には思うままに望んで欲しいんだ」
そっと、ただひたすらそっと囁いた。事の発端が何を偉そうな口を、と心中で罵倒の限りを尽くしてはいるが、こうでもしなければこの優しい娘は自らの黒いものをただ己の内に溜め込んでしまうだろうと恐れていた。それだけは嫌だった。男は全く無責任にジルの安息だけを願っていた。
ジルはますます強く男の手を胸へと押し当てた。柔らかい肉と骨の奥から頼りなく鼓動が伝わっていた。訳も無く安堵している自身に男は腹を立てていた。やがてジルはひっそりと口を開いた。
「…………嫌なこと、考えてました」
「聞かせてもらっても?」
「ファティマさんが、リーに抱きついた時。 ……その、リーが、わたしから離れていっちゃったような気がして……
リーが、わたしじゃない女の子にやさしくしてるの見て。……嫌だなって、思ってました」
か細く途切れ途切れの言葉に、男は一々頷いて傾聴していた。ジルの頭のすぐ後ろなので、それだけで伝わっていた。
「たまたまファティマさんが酷い目にあってたから、頼み事しにいった側のリーがやさしくしたんだって……
リーならそうするって、わかってたんだけど、 ……なにか、苦しかった」
「うん」
「ごめん…………困るよね、こんなこと言ったら」
「困りはする。君が一点の非も無いのに酷く苦しんだことと、そんな事態を招いた自分の間抜けさに」
本心からの言葉だった。男は、これまでの経緯にジルの責を認めることができなかった。
「……妙に好意を持たれてしまったのは、完全に俺の失敗だ。本当にごめん。
約束もしたし、俺も助けてもらってる。ファティマに協力することは止められない」
「……うん、わかってる」
「だけど、どんなことがあっても。俺がいたいのは君の元だ。他は最悪どうでもいい。君かそれ以外かなら、絶対に君を選ぶ」
死んでも君の側にいたい。そう言いたい衝動を辛うじて抑えていた。苦しめてばかりの俺のこんな無責任な言葉が、果たしてどれほどの誠意になるのか。自身の無能に脳内で無数の悪罵を投げつけていた男の手が、更に強く抱き締められた。柔らかい肉が押し潰されるような感触があった。ジルの耳は暗い部屋の中でその髪と殆ど混ざり合ってしまうほど赤くなっていた。自身の不甲斐なさが余りにも呪わしく感じられた。
「俺が君の好意に見合うとは全然思えない……ごめん、弱音だな。精一杯努力する。君が少しでも幸福を感じられるように」
本当にそうか、貴様如きにそんなことができるものか。
「…………やだ。リーも、幸せになって」
「わかった。君と一緒に幸せになる」
心底からの疑念を全く裏切って、口から言葉が突いて出た。そんな馬鹿なと思っているうちに、ジルは身を捩り男へと向き直っていた。泣き腫らしたように赤くなった目元に胸が酷く痛んだ。
男の首にしがみつくように腕を回し、目を閉じ柔らかい唇で男の唇を塞いでいた。柔らかい体を可能な限り男へと押し付けてくる。誰にも教わらないまま、背中に回した腕で抱き締め返していた。安らぎと呼ぶには余りにも強烈な情動が互いの体の接点から交換されるのを感じていた。或いは、これを幸福と呼ぶのかもしれなかった。
†
翌朝、ジルは全く平常通りの態度で振る舞っていた。男は朝食の片付けを終えると共に市街への外出を告げた。
常の通り玄関口まで見送りに来たジルを特に考えもなく抱き締めていた。報酬系を刺激された獣のような自然さだった。ジルは驚いたが、すぐにあやすように回した腕で男の背中を撫で、早めに帰ってきてねとだけ口にした。
ユニオン設備……カフェ・ラッテを建設!!
ユニオン設備
┗バニラクッキー
┗ハニートースト
┗カフェ・ラッテ
ユニオン連帯
┗ジル・スチュアート
ユニオン金庫……15898c
利子配当…………1589c
Lloydを対象に配当率を2に設定!!
ファティマを対象に配当率を1.01に設定!!
アンフィニ&許多を対象に配当率を1.01に設定!!
ニシュカ・パーシスタンスを対象に配当率を1.01に設定!!
葉隠忍を対象に配当率を1.01に設定!!
適性の訓練をしました
適性が1上昇した
適性の訓練をしました適性が1上昇した
適性の訓練をしました適性が1上昇した
適性の訓練をしました適性が1上昇した
適性の訓練をしました適性が1上昇した
100c支払い、今回の戦闘においてAPを10%強化した
ENo.125からのメッセージ>>偽りの射ち手 「[献金しました] [献金しました] [献金しました] [献金しました] [献金しました] 」 |
メッセージ
◆戦闘結果
戦闘報酬
明日の戦場
第7ブロック
セクション・4[ハッキング]
セクション・4。金属球の行き交う、何かの物理回路。計算するのは――
来週の霧濃度:99%
来週の電磁波:89%
来週の警戒値:507%
ジル・スチュアート |
Lloyd |
ハノジ |
ちひろ |
アスラ・ヒネモス |
蒼馬 |
ユーリア・クラネルト |
氏仁 ヤスオ |
Er=Jr=Schaaf |
Engelchen Eckhart |
アイシャ=ロングゲート |
ウィルマ・ウォーカー |
ケイト・アニュレ |
インシオン |
アマレット |
氏仁 ヤスオ |
ODE-30 |
闇 |
エンセイル・フェノメノン |
グロリア=グラスロード |
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デバステイター・センチネル≪ΜΕΛΠΟΜΕΝΗ≫[デバステイター] |
機動破壊兵器『ダウンバースト』[粒子] |
『戦闘ヘリ』[物理] |
術導DR『ドゥルガー』[霊障] |
『幽霊戦闘機』[霊障] |
『電磁鉄線』[電子] |
『電磁鉄線』[電子] |
『戦闘ヘリ』[物理] |
『電磁鉄線』[電子] |
『幽霊戦闘機』[霊障] |
『戦闘ヘリ』[物理] |
『戦闘ヘリ』[物理] |
機動破壊兵器『ダウンバースト』[粒子] |
『電磁鉄線』[電子] |
『戦闘ヘリ』[物理] |
『電磁鉄線』[電子] |
『幽霊戦闘機』[霊障] |
機動破壊兵器『ダウンバースト』[粒子] |
機動破壊兵器『ダウンバースト』[粒子] |
『戦闘ヘリ』[物理] |
『戦闘ヘリ』[物理] |
『幽霊戦闘機』[霊障] |
『幽霊戦闘機』[霊障] |
機動破壊兵器『ダウンバースト』[粒子] |
『巨大鉄球』[物理] |
『巨大鉄球』[物理] |
『巨大鉄球』[物理] |
キャラデータ
名前
Lloyd
愛称
ロイド
機体名
未確認機『グレイハウンド』
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プロフィール
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ロイド Lloyd. インセイリー、リー・イン、レッド・リーザリー。それらと同一の存在。 セクション2直前の作戦で死亡したはずの彼が何故存在しているのかは当人にもわかっていない。 白い髪は灰色に染まり、最も大きな特徴だった義肢も血と肉の手足に置き換わっていた。 公的には故人であるため、生前の名前は用いず、とりあえず勝手に使われていた呼称をそのまま使っている。 乗機はかつて駆った愛機ブライトネイルに酷似した灰色のWH、グレイハウンド。これも勝手に使われていた呼称。 グレイハウンド GreyHound. シルウェストリス航空本社襲撃と前後する形で目撃例が生じた暗い灰色の未確認機。 『グレイハウンド』『ミストボーン』『ロイド』『アッシュ・ワン』『灰色の悪魔』等、発見から日が浅く、呼称は発見者がつけたもの、企業が当てたコードネーム、過去の伝説的WHをもじったものなどが好き勝手に用いられている。 決まって戦火の中へ駆けて現れては敵味方を選ばず無秩序な破壊を齎しては灰燼を残して去っていく。 レーダー類の反応からも「突如その場に現れた」としか考えられず、またロストする際も同様であるため、未知の残像、霊障、撃墜された者たちの灰から生まれた怨念の具現化、或いは企業の秘密兵器であり戦場に現れるのはそのテストのためなどと囁かれるが、何れも憶測の域を出るものはない。 灰色の装甲が呼吸をするように膨張と収縮を繰り返す。 逆関節上の脚部だが、しばしば腕部を地に突き四足獣の如く跳躍、走行する。 携行火器の類は無く、専ら腕部から爪状のエネルギー兵器を発生させての接近戦を行う。 戦場で目にした者の多くは、唸る、或いは呻くような怖気の走る声を聞いたと口にする。 ※既知ロール不可。戦争に忙しかった貴方は、これを見るのは初めてなはずです。 ※よく似たものは見たことがあるかもしれません。5年前は特に。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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機体データ |
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1 | 素材 | 粒子吸着材30 [30/耐粒/---] 特殊B[280] [素材] |
▼詳細 |
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2 | 素材 | 噴霧ノズル30 [30/噴霧/---] 特殊B[280] [素材] |
▼詳細 |
3 | 軽ブースターA | リーイン・カーネイション [24/重霊障/重霊障]《装備:10》 | ▼詳細 |
4 | --- | --- | --- |
5 | --- | --- | --- |
6 | エンジンB | なおす冷風扇 [27/重霊障/重霊障] | ▼詳細 |
7 | --- | --- | --- |
8 | 中逆関節A | ハイマットフルバースト [26/重霊障/重霊障] 機動[413] 跳躍[206] AP[1237] 旋回速度[825] 防御属性[粒子] 防御値[423] 貯水量[154] 弾数[1] 積載量[2900] 消費EN[105] 金額[1027] 重量[1204] [逆関節] *作者* |
▼詳細 |
9 | 操縦棺E | AberrationAstray [22/---/---] | ▼詳細 |
10 | 中逆関節A | ハイマットフルバースト [26/重霊障/重霊障]《装備:2》 機動[413] 跳躍[206] AP[1237] 旋回速度[825] 防御属性[粒子] 防御値[423] 貯水量[154] 弾数[1] 積載量[2900] 消費EN[105] 金額[1027] 重量[1204] [逆関節] *作者* |
▼詳細 |
11 | 術導肢A | zawerzdrr【無繋呪肢体】 [27/重霊障/重霊障]《装備:11》 | ▼詳細 |
12 | --- | --- | --- |
13 | 軽ブースターA | 仆歩 [26/重霊障/重霊障]《装備:8》 | ▼詳細 |
14 | 軽ブースターA | UNLEASHEDFIRE [29/重霊障/重霊障]《装備:4》 | ▼詳細 |
15 | 軽ブースターA | 軽ブースターA設計書 [26/耐粒/---] 特殊B[200] [設計書] |
▼詳細 |
16 | 術導肢B | 複製試作偽肢『アガトラム』Mk.I [28/重霊障/重霊障]《装備:3》 | ▼詳細 |
17 | --- | --- | --- |
18 | --- | --- | --- |
19 | --- | --- | --- |
20 | エンジンB | クゥル・ツテクの『自我』 [28/重霊障/重霊障]《装備:5》 | ▼詳細 |
21 | --- | --- | --- |
22 | 軽ブースターA | リーイン・カーネイション [24/重霊障/重霊障]《装備:9》 | ▼詳細 |
23 | 軽ブースターA | リーイン・カーネイション [24/重霊障/重霊障]《装備:6》 | ▼詳細 |
24 | --- | --- | --- |
25 | 術導肢A | zawerzdrr【無繋呪肢体】 [27/重霊障/重霊障]《装備:7》 | ▼詳細 |
26 | --- | --- | --- |
27 | --- | --- | --- |
28 | --- | --- | --- |
29 | 砲塔B | <W-E> [26/重霊障/重霊障] | ▼詳細 |
30 | エンジンB | クゥル・ツテクの『自我』 [28/重霊障/重霊障] | ▼詳細 |
ウルフィング・スモークのブック結果……ランク外!!
現在のユニオン金庫額……16498!!
ファティマのブック結果……ランク外!!
現在のユニオン金庫額……16598!!
シズカ・ビハインド・ブラスト・ベットトゥステークのブック結果……ランク外!!
現在のユニオン金庫額……16698!!
リュミドラ・カラビネル・レギナルトのブック結果……13位ランクイン!! 配当金……なし!!
現在のユニオン金庫額……16798!!
Leonoreのブック結果……12位ランクイン!! 配当金……なし!!
現在のユニオン金庫額……16898!!