ENo.0176　カヴネル・レビン

オレは相棒『ライトニング』の操縦棺に座っていた。
…まだ暖かい。前々回の戦いからかなりの時間が経っているはずなのに、あの時の熱が残ってるように感じた。

壁に触れてみる。生物の内蔵に走る脈のような模様のそれは、とても柔らかい。
ドラグーンのコックピットは通称『胃』と呼ばれている。
ドラグーンには通常、機体の口部から搭乗する。そんな乗り方をするハイドラはオレの知る限りではいないから、たぶん世界をまたいでもなお珍しい仕様なのだろう。

口から乗るということは、つまり「食べられる」ということだ。
オレがまだ訓練生になりたてだった頃。憧れのドラグーンに初めて乗った日には、それがあんなに怖いと思ったのに。
今となってはここにいなければ、自分を見失ってしまいそうな気さえする。拠点にしている格納庫でさえ得られない安らぎが、『胃』の中にはあった。

もう一度。いや、何度だってドラゴナイズ（※前回の日記参照）したい。人機一体になる感覚、高揚感、恍惚としたあの心地よさが欲しい。

ああ。あの時、いっそ“溶けてしまっていれば”――

…何考えてたんだ、オレ。
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風の音を聞き、冷たい霧を浴び。
任務の集合時間には随分早いというのに、オレはいつの間にか残像領域の空を飛んでいた。
無性に飛びたくなった、というただそれだけの理由で。

ふと見下ろすと、寂れた教会のような建造物がぽつりと建っている。
更に目を凝らす。漆黒のハイドラ『ナイトアンセム』が、建物の外にそのままの状態で停まっているのが見えた。
もしかして、ここがセシィたちの拠点なのか？

このまま立ち寄るかどうかはしばらく迷った。
出撃前とはいえ、取り込み中のところを押し入るのも悪いし（不審がられない程度に）見るだけ見てから去ろう。

オレはそう考えながら数分間に渡り旋回を続けた後、廃教会の上空を離脱。そのまま任務の集合地点へと向かった。

待ってろ、デバステイター・センチネル≪ΜΕΛΠΟΜΕΝΗ（メルポメネー）≫。
お前のその領域拡散精神遊離環（ちから）は、もう通用しねえって事をオレたちが証明してやる。

飾り気のない格納庫。その奥には、黄色い機械仕掛けの竜が佇んでいるという。

格納庫はだだっ広く、まだまだ他のハイドラも入れそうだ。
拠点として利用したいなら、ここの所有者に申し出てみるのもいいだろう。

看板には次のように書かれている。

ここを拠点とする者は、以下の恩恵を受けることができる。
・訓練は基本的に制御のみだ。
・購入は主に追加素材、または機動力強化が中心だ。
・ブックメイクは原則行わない。

オーナー：Eno176