ENo.0176　カヴネル・レビン

オレはテレビの放送を見て、ただ愕然としていた。
この世界の外には、何もない。この世界は、夢の切れ端のようなものに過ぎない。

あの日、オレと一緒に落ちた『ワンダリング・ワームリングス』のメンバー。何度も何度も探し回ったが、結局何ひとつ情報は入ってこなかった。
オレは…何故？　何のためにここにいる？　死に損なっただけなのか？　それとも。とっくに死んでいて、走馬灯のように夢を見ているに過ぎなかったのか？

それとも――もう一度生きるチャンスを、掴み取るための試練なのか？

ここにいる者たちの幾人かは、自分の意思でやって来たのかもしれない。
だが、彼らの力を借りるだけでは無理だ。外界に出ることができても、元の世界に辿り着けなければ、オレはただ世界の狭間に彷徨い続けることになるだろう。
そのための『帰り路（みち）』を、なんとかして探さなければならない。でも、どうやって？

とにかく、残された時間は少ない。急がなければ。

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この世界からの脱出方法を模索し続けていたオレに、思わぬ情報が飛び込んできた。
シルウェストリスが時空解析というのをしているらしい。
その究極の目標と言えるものが『フィデネルシェロ』というシステムだ。時空震を誘発させ、時空の穴を空ける――すなわち残像領域を抜け出すというのだ。
これに乗らない手などない。しかし先に語った通り、オレにはマテリアルベルトからの借金がある。
オレがシルウェストリスに積極的な貢献を始めるということは、マテリアルベルトへの協力を放棄することに他ならない。そしてこの世界を見捨てる、ということだ。

だが、この世界の運命なんてオレには関係ない。オレは自分に世界を救える力があるとは思えないし、もし救えたところで、何になる？　オレは一生この世界に閉じ込められてしまうのか？　限りない深みへ世界と共に沈められてしまうのか？　ダメだ。それだけは避けなければ。

突如逸った感情に従い手に取ったのは、例の請求書。

オレは自らを縛りつけるこの紙切れを破り捨てようとして――止めた。

掛けられた首輪を、外せなかった。

飾り気のない格納庫。その奥には、黄色い機械仕掛けの竜が佇んでいるという。

格納庫はだだっ広く、まだまだ他のハイドラも入れそうだ。
拠点として利用したいなら、ここの所有者に申し出てみるのもいいだろう。

看板には次のように書かれている。

ここを拠点とする者は、以下の恩恵を受けることができる。
・訓練は基本的に制御のみだ。
・購入は主に追加素材、または機動力強化が中心だ。
・ブックメイクは原則行わない。

オーナー：Eno176