ENo.0047　『Unterlegene』

打ち合わせは決まった時間に流れるニュースの時間を目安に行われる。
その内容を軸に今後の方針を決めたりするためだ。
特に無かった場合はニュースが終わり次第、即解散なんてこともある。
点呼の意味合いもあったが、この人数と関係性から特にそれほど重要でもない。
（朝が早い場合は前日に外出の申告があったりする）

…ニュースを聞き終え、通信のボリュームを最低値に絞る。
流石に内容は到底無視できるものでもなく。

「…さて　いよいよ展開が理解の範疇を超えてきたが？
　なにがどうなって遺跡が巨人になるんだよ」

「残像領域ではよくある事で片付くんですかねこれ…
　下手したらライダーは動く遺跡の中で彷徨う可能性ありましたよね？」

『さっさと帰還して正解っすね』

ヤシロの隣ではストーブの上で温めていたケトルが沸騰の合図で湯気を出す。

「いや…でも　この後のセクション…攻略？はどうなるんだ？
　やっぱりあの…動く遺跡に乗り込む必要が…？」

『MBMはドゥルガーを破壊って言ってるんすよね
　だから遺跡そのもの…巨人を破壊することになるんじゃないすか？』

「つまり本格的に探索から破壊にシフトしていくのか？
　あーもっとも…センチネルがいる以上簡単にはいかないんだろうが」

「…企業側がどう出たって構いやしないわ
　私達は協力できる限りはするけれど　ヤシロが危険な目に合いそうなら手を引く
　戦場がそんな甘いものでないのは理解しているけれど
　それでも　今はそうやってきたのだから　それを続けるだけよ」

「リリーが心配する気持ちも分からんでもないが…
　操縦棺の調整を重ねたのもあってだいぶヤシロの酔いは改善されたじゃないか
　もう少し信頼してもいいんじゃないか」

「……それは」

『まあまあ！俺もまだ完全に補正しきれてるわけじゃないし！
　こればかりは戦場に出る回数を重ねるしかないっすけど　そこは全力で頑張るんで！ねっ』

ﾋﾟﾛﾋﾟﾛ電子音を響かせながらモニターに文字が素早く展開される。
PCモニターに映る彼はマイク機能を使う事で此方の音声を拾えるらしいが、
自身が音声を発することはできないらしく、こうして出力した文章を読んでもらう為に電子音を鳴らす。

『それにヤシロだって出撃中はリリアナの心配してるっすよ？
　平気とは言え撃墜しちゃったらまた心労で倒れないかなとか大破させたら修理とｋ』

「あああああ！！！！！」

ヤシロの手によってPCがバン！と勢いよく閉じられ、抗議のビープ音が響いた。

「……ははあ　お二人さん　それはどっちもどっちってヤツだ」

二人は何も言い返せず、顔を手で押さえたきり黙り込む。
PCは抗えずスリープモードに入り、それきり静かになってしまった。

―5年前、とあるハイドラライダーが拠点としていたガレージ。
現在はリリアナがガレージの所有権を持ち、ヤシロと相談した結果…宿泊施設に改装予定だった。
改装中の所へ遺跡出現のニュース、
途端に建設業者が別の仕事を捻じ込まれて改装は中止されちぐはぐな拠点になってしまった。

半分がハイドラを整備するガレージ。
半分が宿泊施設の客間や家具も何もない部屋がいくつか。
サボり…もとい休憩所として使われている様だ。