ENo.0166　ステラ＝アレグレット

ずっと言えなかったことがあった。



ベアが私のことをどう思っているか、本当はわかってた。



あの事故から、彼女はずっと苦しんでいるようだった。
私が四肢を失ったのは、自分のせいなんじゃないかって。
私がライダーになって、戦場で危険な目に遭っているのも、自分のせいなんじゃないかって。
私が義肢からの痛みで倒れたのも、自分のせいなんじゃないかって。
そんな風に私のことを気遣うのは、自分が傷つきたくないからなんじゃないかって、そう思っているのも知ってた。



だから何も言えなかった。
私が「気にしないで」なんて言ったところで、「じゃあ、気にしない」なんて言う彼女じゃないし。
「ベアのせいじゃない」なんて言って納得するような彼女じゃない。

それになにより、ベアはそんなふうに、私のことを想って、色々としてくれているというのに
私は、ただ「自分らしく生きたい」なんてことのために、ベアの優しさを全部無為にしようとしてた。
それでいて、しかも「ベアに嫌われたくない」なんて思ってた。
自分でも笑っちゃうくらい自分勝手だと思う。



でも、ようやく言葉にすることが出来た。



嫌われたくないって思ってるのは今でも変わらない。
それでも、言葉にできたのは……きっと色んな出会いがあったからだ。

シータは、戦場に出ることも、上手く戦えないことも……
人と話したりすることさえ恐れながら、それでも頑張って戦っていた。

オペ子は、私と同じように身体を壊したりしながらも、やっぱり私と同じようにハイドラに関わることをやめられないでいた。

ボウマンは、「受け入れてくれないかもしれない」という恐れを、私は受け入れなければならないと……
「後は伝えるだけだ」とも言ってくれた。

人と話していると、誰もが頑張って前に進んでいるんだと感じる。
私だけ、私達だけ、いつまでも立ち止まっているわけにはいかないんだ。
そう思うことが出来た。





「よっし！ここから再出発だ！
　ずっと言えなかったことを言えたから、なんだかスッキリした気持ちだよ！」
「貴女と意見が合うなんて、珍しいこともあるものね」
「折角良い感じになったのに、テンション低いな～ベアは」
「この性格は生まれつきよ。
　それより、一応釘を刺しておくけど、貴女の気持ちはよくわかったけど、危険に自ら突っ込んでいくのを容認したわけじゃないから」
「……というと？」
「今の状態で戦場に出れるわけないでしょうが。
　この間の不調の原因がわかるまで、徹底的に調べさせてもらうわよ。
　今までは貴女の時間を束縛するのが嫌で、そこまで厳しくやらなかったけど、今日からは遠慮しないわ」
「それ、どれくらいかかるの？」
「原因がわかるまでって言ったでしょ？
　今日は仕事がなくて良かったわね」
「えっ、ちょっ、待っ………」