ENo.0440　ヴィラカティ

『輸送場所は――地点――望む者は所定の時間に―――』

セクション１・サルガッソのあちこちに鳴り響く声。メガホンが叫んでいる。
人工ベーコン味の串の残りを口に放り込み、輸送されていくハイドラたちを眺める二人がいた。
老整備士トマス・ゴメスと、ヴィラカティだ。

「本当に行くのかい」

トマスが問いかける。
ヴィラカティたちライダーは、これからセクション・６を目指すのだ。
プレアの弁に賛同する者、契約者の仕事をする者、理由は様々。

「えぇ　どちらにせよ契約は白兎とコロッセオだけだから」
「…行かないという選択もあるのだよ」

サルガッソからは遠すぎる。
ヴィラカティはセクション・５のキャンプに移ることを選んだ。
「トマス　ありがとう」だから、ヴィラカティはお別れを言っている。
この場所と、トマスに。

「でもね　わたしは戦いたいの　デバステイターが旅を続けるように
　わたしも続けるわ　わたしの旅を」

ここから先に待つのは地獄。帰れない者もいるだろう。
それでも先に進む。道が続いている限り前に進むのだ。

「……お父さんも…君と同じ選択をしたのだね」トマスは頷き、微笑んだ。

「えぇ　誇りに思うわ」

ヴィラカティは振り返り、手を振った。

「さようなら」

「霧の先へ行こう」