ENo.0134　ギルデンロウ

　しばらく前に、スノウ・ホワイトに『なぜ死にたくないのか』と尋ねたら、『わからない』と答えられた。
　子どもに聞いても仕方なかったな、と今更思う。

　何の為に生きているのか、良く分からない連中だらけだ。レウィシアは狂人に見えるし、実際そうなのだろうが、むしろ分かりやすい――俺に近いのかもしれない。

　俺も死にたい訳ではない。といって、このまま生きていても仕方ない。
『《not Be》、すべてはリソースなんだぜ。金も時間も才能も人も、“勝利”の為に使うのが正しいやり方なのさ』
　なら、今の俺にとっては、命もそうだよな？

　あの時から、到達すべき場所は見えなくなっていた。
しかし、“勝利”はどこかにあるハズなんだ。
でも、このやり方で合ってるのか？リソースの使い方として、はたして正しいのか？
　MOBAで勝つやり方しか俺はヨハンに教われなかった。あいつと俺にもっと時間があれば、きっと今頃こんな所にきっと居なかっただろう。奴が死んだからだ。

『視界が暗いっつってタワー下にいつまでもいるわけにはいかない。期待値でモノを考えるのさ。リスクとリターン、浮かんだ選択肢で何が一番ワリがいい？』
　辿るべき道が一つしか見つからなくとも、何もしないよりずっといい。俺にとっては命を賭けることは、リスクなんかじゃない。ただIn Queをするっていうだけの話のハズだ。

　わかってんだよ、ジョット・ノアイ。うるせえ野郎だ。

『ハイドラ乗りは戦場にある限り、死と隣り合わせの存在だ。
実体剣やレーザーブレードなどを機体に握らせ、
火器を目前に対面して戦う格闘機乗りなら、死と重ね合わせの存在といっていい。
　敵の中に孤立しながら、斬り開いた敵機の残骸の奥に、同じく剣を振るう味方機を識別することがある。
会話がなくとも、そのような面子を幾度も見つけていると、僅かな連帯感を抱くものだ。
遅かれ早かれ、奴らの姿は見ないようになる。
「奴は霧になったんだ」感傷混じりに言う奴がいた。
俺もいつかはそうなるのかもしれない。しかし俺たちは剣を握ることをやめない。
名誉のため。生きてる実感のため。病的な矜持のため。あるいは死ぬために、剣を握らなくてはならない。
　……そして敵陣の中で、また新しい顔を見るようになる。“物好き”は次々やってくるのさ。
だって、残像領域はそもそも“物好き”のための場所だろ？』
　――そんなことを言ってたアイツは、つい昨日で、霧になったよ。