ENo.0071　アキラ・ハリアエトゥス

セクション1に到着した。ここからは他のライダーと合流次第、“パンディオン”で進んでいくことになる。
トレーラーは一度おいていき、戦場が静かになってから自動運転で合流させる。

脚部に使っていた飛行ユニットだが、こればかりは同等のものを再現できなかったために今は軽量逆足を装備している。
本来流線型の胴体の下についているはずの大型の翼状装備は省かれ、機体上面に四枚羽になるように二基搭載した。
代わりに底面には細い逆関節脚を取り付けてあるため、シルエットの鳥類らしさは増している。
“尾羽根”として装着したパンツァー・クリンゲもシルエットの変化に一役買っっている。
飛行ユニットを取り付けた状態と比べ機体重量は増しているが、そもそも積載量がダンチだ。
火力は若干心もとないが、いつも通り撹乱機として動くつもりなら問題はないはずだ。


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浮遊によるホバリングではなく、歩行して移動できるようになった“パンディオン”を立ち上げ、少し慣らし運転をする。
といっても集合地点の周りを歩き回るだけだ。そう遠くに行くわけでも、激しい動きをするわけでもない。

トレーラーを止めた地点からやや移動した巨木の根の上。周囲から見れば高台になるそこから、機体を限界高度まで浮かせて下を見下ろす。
大地に走る亀裂。ここから見れば小さくも見えるが、実際は渓谷のように巨大なそれは、隠されていた回廊を顕にしている。

この回廊こそ自分たちがこれから挑む未踏の領域であり、そのほんの入り口に過ぎない。
こうしている翌日には俺たちはここへ挑み、洗礼を潜り抜けた者はハイドラキャンプ『サルガッソ』へとたどり着くことができる。


実際、そもそもその洗礼をくぐり抜けることも出来ずに散っていくライダーは少なからず居るらしい。
自信はある。これでも要塞攻略戦も、禁忌との戦いも、霜の巨人との戦いも俺は生き延びている。
俺だけの力ではないが、これまでずっとコロッセオ以外では負け戦はなかったと言える。

それでもなお、今怖気づいているのはなんなのか。
この亀裂を、回廊を前にしてやっと理解できた。
これまで戦ってきたのは、たとえ未知の敵だとしても誰が放ったものか、何を起こす物かを知って戦っていた。
だが、今回は違う。この先、この回廊の奥に何が眠っているのか全く分からない。
未知の領域を前にして、今更怖気づいているのだ。


……馬鹿馬鹿しい。未知ならば、この領域に来たときから全てがそうだろうに。
得体の知れないスクラップから機体を組み上げ、死んだライダーのライセンスを乗っ取って戦いに身を投じたのは誰だ？
俺が乗っているのはハイドラだ。かつてドゥルガーを破壊し、世界を残像にしたモノ。
ならば、怖いものなどあるはずはない。立ちはだかる全てを破壊し、行きたいところへ行けばいい。

自分にそう言い聞かせ、“パンディオン”を降着させる。
トレーラーがキャンプにたどり着けない可能性も考慮して、コクピットの後ろには食料や日用品を納められるスペースを作ってきた。
毛布を引っ張り出し、首まで羽織る。しばし仮眠を取る。……なんとなく、ドゥルガーに夢見た人の気持ちを理解できたような気がした。

廃棄された様々なものが集まり、
それを目当てに人々が集まり、
集まるために様々な建物が増えていった地区。
ハイドラパーツの素材になりそうな質の資材も転がっているようだ。







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