ENo.0203　ネリー・アイシャム

「あ、おいしい」

ネリーはバー『レスティンピース』で遅めの夕食を取っていた。
野菜とオキアミを混ぜたサラダは新鮮であったし、ワインで煮込んだ肉はとても柔らかく、口に入れるととろけるようだった。
合成肉不使用という表示はもしかしたら本当なのかも、だとしたらかなりコスパがいい店ね、とネリーはお気に入りに登録した。

ネリーは、夕食はほとんど、というか毎晩このようなバーで済ませていた。
しかも、決まって、それなりの値段を取る静かで落ち着いた雰囲気の店を選んだ。

安くて喧噪極まったような酒場はうるさくて耐えられないというのもあるが、こういう高めの店は客層が比較的良いからだ。
というのも、ネリーが外食するのは食事そのもの以外にもうひとつ目的があった。

それは、その夜一緒に寝てくれる誰かを見つけるというものだ。
一言で言うと『男漁り』ということになってしまうのだが、
とある理由からひとりではどうしても眠ることができないネリーとしては、求めているのは本当に文字通りただ一緒にそばで眠ってくれる人、
それこそ相手が女でも構わないのだった。
……が、結局男女の関係というのが一番簡単に求める条件を満たせるために、どうも大体そういうことになってしまう。

ルート・ロックサイド少年も、そのようなネリーの私生活には気づいているようで、直接なにか言われたことはないが顔を見れば大体どう感じているかはわかってしまう。

（……あなたが勝手に師匠だとか思ってるだけじゃない……）

とがめられる筋合いはない、やめさせたいならあなたが一緒に寝てくれるの？
そう言ったら彼はどんな顔をするだろうか。

試してみる気にはなれなかった。