ENo.0082　アキ・ニタドリ

戦闘ログを再生する。
5年前、アキ達訓練生達の記録の中で唯一残っているディスクだ。
作戦開始の合図とともに、5機のウォーハイドラが動き出す。

前衛に3機、後衛に2機。アキは後衛の射撃支援機として参加していた。
マイコが載る重火力型が複数機に斉射・撹乱を行い、マリのバランス型機体が牽制を行う。
ミカの近接戦闘特化型が格闘で敵にトドメをさし、シホの支援型が情報を更新し、次の敵機を指示する。
そのうちに出てくる撃ち漏らしの機体を、一機一機丁寧に排除していくのが、アキ・ニタドリの戦闘スタイルだった。
だったのだ。

「…それが、これか…」

先日の戦闘を思い出す。重装機の装甲に頼った突撃を繰り返し、敵機を近距離射撃戦に持ち込む。
…まるで死ぬのを恐れていないかのように。
結果は散々だった。敵機に追撃を仕掛けようとし霊場を踏んでしまい、機能不全を起こしての撤退。
あれでは命がいくらあっても足りない…というのが正直な感想である。
機体の調整は随時行っているが、まるで藻掻くかのように動きを変えるアキのスタイルに追いつくことが出来ていないというのが現状だった。

戦闘ログが終わる。各機体のダメージ判定は基準値以内で収まり、各スコアの合計値が出る。
アキの総合スコアはチームの中でも下の方だった。だが、生存率はトップに躍り出るほどだった。
過去とは真逆の方向に、彼女は進み始めている。

「…何を、焦っているんだ…」

それはこの場にいないアキに向けて放った言葉だったのか。

それとも、自分自身にか。