ENo.0292　ディーヴァ

日常を送っていたのか、戦場の帰りか。
あなたはふと何かの声を拾った。

以前と同じだ。

それは歌声。
聞いたことがある曲に意識が覚める。
きっとあの子がいるのだろう。
ふらふらと導かれるように、あなたは歌声の出所を探す。

･･･？

あなたは違和感を覚え、一瞬だけ足を止める。
耳に届く歌声は大きくなり、行先が正しい事を示している。
なのに、どこか、ズレているような･･･。

それはすぐに見つかった。

否。
・・・・・・
見つけられたという方が正しいのか。



「あら」



女がいた。
あなたが思い浮かべていた、青髪の少女とはまるで違う、陰のある女だ。
あなたはその時違和感の正体に気付いた。



「ふふ、素敵な歌でしょう？」
「私も、この声、この曲･･･ずっと大好きでしたから。貴方の気持ちも分かります」



確かに、聞こえてくるのは間違いなくディーヴァの声であった。
しかし、いつものように途切れ途切れの合成音声ではない。
もしもディーヴァが、傷を負う前であったらこんな声で、こんな風に喋っていたのだろう。そう思わせた。
そう、先ほどまでの歌も、途切れたり、スピーカーを通して音質が落ちたりしていた物ではなかった。
美しい歌声、ではある。
だが、べっとりとへばりつく違和感の正体が、それであった。
女は、かつてディーヴァがそうしていたように、･･･彼女の物と似た機体に腰かけてあなたを見下ろす。



「初めまして、私は･･･『トスカ』。この子は、『カヴァラドッシ』」



単刀直入に言って。私は貴方の事は知っています、と女は語る。にやりと口の端を吊り上げ、言う。
彼女そっくりの声で。



「ふふ、警戒しないでください。ほら、ただの小娘じゃないですか。ハイドラも、今は起動してませんから」
「そうですね･･･では、警戒を解くためにも、何でも一つお答えしましょう」
「彼女なら･･･ディーヴァなら、そう、最初にお名前を聞いたのでしょうけど、ふふ、ふふふ」
「私も習うべきだったかな？ふふ･･･」



試すように、楽しむ様に女･･･トスカは言う。
かつての再現のようなこの状態が、彼女の声が、彼女と同じような機体が、酷く頭をかき乱すのを感じた。
似てはいない。だが、トスカと、ディーヴァの姿が、ブレて、重なって見えてしまう気がした。
頭を振ってあなたはそのイメージを追い出す。
さて･･･何を聞いてやろうか？



⇒パンツァークリンゲの話を聞く
何が目的か聞く
ディーヴァをどうしたのか聞く
スリーサイズを聞く
聞きたいことなどないと突っぱねる



「･･･は？」



⇒パンツァークリンゲの話だ



面白いくらいにトスカは狼狽する。
こいつは突然何を言っているのだ、と。
ちょっと狂人を見るような目で見るのは止めてほしい所だが、



⇒よかった。



⇒同じ声をしていても、ディーヴァと君は違う。



⇒彼女なら、何も引っかからず、話を続けていた。



かつて。
あなたが、話すことが無かったのか、単に何か色々と滑らせた結果なのか、同じように唐突にその武装の話をした時も。
彼女であれば、それを受け入れて、淀みなく返事をしていた。
ダブっていた、目の前の女と、彼女のイメージが乖離していく。
彼女も出会ったばかりではあるが、どこかディーヴァと自分を重ねようとしている節があった。
冷静になる。
観察する。
彼女の喉元。ディーヴァと同じような傷。
・・・・・・
もしかすると　という疑念が確信に近く浮かび上がるが、今はそれを沈めておく。
くしゃり、と、トスカは表情を歪める。



「･･･成程。あの子を知っているのですね。･･･憎らしいくらいに」
「からかってやるつもりでしたが、もういいです。そんな気は失せました。言いたい事だけ言わせてもらいます。」



トスカは表情を消し、操縦棺に乗り込む。
このまま敵対行動をとる様子では無い。あなたは続く言葉を待った。



「あの子に、近づくな」

「分かってますよね？あの子、『人を嫌えない』んです」



そんな感情を、無くしてしまったから。と、女は謡う。



「元からそんな性格だったんですけど。ちょっと弄られて、その性質が強くなって･･･分かりますか？」

「つまり、あの子は、あなたでなくても、誰でも好きになってしまっていたんですよ」

「まるで、恋愛ゲームの主人公みたいに。クリアするまではベタベタでも、次の周、違うデータ･･･簡単に次の誰かに興味が移る」

「許せますか？」

「まるで、『自分を攻略するゲーム』に巻き込まれたような気分でしょう」

「･･･それとも、もしかして、あなたがあの子を攻略するような、ゲーム気分でしたか？」

「ふふ、返事はいりません。ですが、忘れないでくださいね」


あの子に、近づくな

再びそう吐き捨てて、操縦棺が閉じられる。
そしてそのハイドラと、女は蒸気を上げて去っていった。

（ディーヴァ好感度　＋？　（最早好感度は、彼女に対しては意味がない）（好感度メーターは、そのまま消失した･･･））

「♪（遠い局のラジオが流れている）」
（射撃５　素材＋１）

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緩い空調にむき出しのコンクリートと配線。

人間用の火器練習用の的がやや離れた場所に見える。

人数分のイスが用意され、それ以外は壁際に積まれている。

軋む扉を二枚抜ければ、ただ広い荒野と、いくつか点在したジャンクで出来た的。

戦場のジャンクが一時的に集められる場所のすぐ近く。練習にそれらを吹き飛ばせば、幾らか使えるものくらいは見つかるだろう。

各自持ち寄ったよくわからない家具が最近増えてきている。生活感↑↑↑

最近、格納庫に見慣れないハイドラがいる。