ENo.0203　ネリー・アイシャム

ネリーは、「それ」が自分の中にあることに突然気づいた。
そんなものが自分に芽生えるなんて意外だった。
理由はよくわからない。ラスティネイル少年と「普通の」デートをして、「彼」が生きていたら得られたかもしれないものを、リアルに体験したからだろうか……？

最初は気まぐれかと思ったが、しばらくしてもなくならない「それ」をネリーは楽しんだ。
こんな気持ちになるのは久しぶりだ。鼓動が自然と高鳴る。

彼は、本当にいい贈り物を残してくれた。
ただ霧中に生きているネリーに、おかげで目的と呼べるようなものができた。


でも、「それ」とはうまく付き合わないといけない。冷静に、慎重にことを進める必要がある。
使えるものは、何でも利用しよう。

情報。そして、人脈が必要だ。

スタニスワフ・クビツァ、ウルフィング・スモーク……彼らと知り合えたのは幸運の一言に尽きる。
ラスティ・ネイル……彼のことはなるべく利用したくはないけれど、目的に近づくために「使える」のは確かだ。

計画を立てないといけない。
でも、面白くなってきた。「引き抜き」の仕事をしていた時を思い出す。


――彼は、本当にいい贈り物を残してくれた。
「それ」……つまり「怒り」を。

ネリーが寝泊まりしている安ホテル。
繁華街からやや離れた人通りの少ない裏路地にひっそりと建っている。

非常に狭くてサービスも悪いが、宿泊料さえちゃんと払っていれば、銃器・男・飼育用バイオ兵器etc……何を持ち込んでも詮索されないところが気に入っている。
が、シャワーのお湯がぬるいのだけはなんとかして欲しいと思っている。