ENo.0160　Strav Quasar

女が操縦棺から飛び降りる。びしょ濡れの髪を振り回し、乾かすようにして。
考えることが多い中、相棒の面倒を見ているときは唯一無心になれる瞬間。いつも何も考えていないようで、それでも無心で居続ける人間など居ないのだ。彼女だってそう。
時には何も考えたくない時がある。体を動かすのも頭を動かすのも好きなタイプと自称するが、それでも疲れるのは事実だ。
もっともいくら休みたいと願っても、取り巻く環境がこうである以上はいつか引き戻されるが。
もう一人の相棒を、銃を手にとり磨く。エンブレムについた汚れを、執拗にふき取る。彼女らが「ゾンビ」と呼称したモノの残骸を。
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いずれ消え去る、それは分かっているし、準備は無いが覚悟はしている。あるいは覚悟しようという気概だけかもわからんが。
「彼女」はどうだ。自我ってものが芽生えてすぐに、意識を統合する。そして経験量の差に、埋没する。生まれて23年の私だって長くはないが、消える準備などない。たった数日なら？いっそ消えて惜しいほどの時間もないのだろうか？
外の景色が見たい、でも叶ってもその光景は戦火の真っ只中かもしれない。私にはそうすることもできないし、そういう奴は何人も見ていれば私だってそうだ。物心ついてから見た最初の記憶は、恐らく家が焼けていく光景だろう。
だがもしも望むのなら、それ以外の物だって見せてやれるだろう。姐貴…マルが見せてくれたように。
私は、私だって「おねえちゃん」なんだからさ。

「ワーーー！ワーーー！めっちゃゾンビきてるじゃないですか！ちょっとハウエルさんもどって！ひとりで対処できるレベルじゃないですってこれ」
「とりあえず倉庫フルオープン！エマさんたちも火器なりなんなりはバンバン使っちゃって大丈夫です！非常事態なので！」
『汚物は消毒！ナノ！』
「先輩！マスターキーあげますから手伝ってください！」