ENo.0096　オルト・イスケー

いつも通りの戦場が終わったあと、被弾したオクトロータスを軽くメンテしてから帰るからと、先にアンフちゃん達には戻ってもらってて、

ちゃぽんと、操縦槽に入った。見たところ損傷軽微、オーバーロードしてたから、レーダーは一つダメになっちゃったみたいだけれど想定の範囲を超えてない。
軽く飛んで戻ろうと、オクトロータスを起動させようとした時、

『…………て』

どこからか、声が聞こえた。小さな声が
聞き覚えがあるけれど、思い出せない。

『…の…と……』

声が聞こえる。
最初は、レーダーが、戦闘が終わったあとの戦場の電磁波に影響を受けたのかと思った。焼きついた残像の声でも拾ったのかと、でもその声はもっと近く、

『は…く………の……とこ……』

声が聞こえる。
確認したけれど、付近に霊場もない。レーダーの映る範囲にも……この目の届く範囲にも

『はやく…の……ところ…げ…て……』

声が聞こえる。とても近いところから。
それは僕の……オクトロータスから響く声で

『─OctolotuS update─』

声が聞こえる。操縦槽の中から。
聞きなれたシステムボイスが告げる。

『─次元潜行を開始します─』
「待って、勝手に……」

始まった自動操縦による次元潜行、目標地点は……

『Wake up padparadscha!』
『はやくあのこのところにいってあげて！』

アンフィニちゃんの座標を指していた。

───────────────────

飛んだ先はひどく強いノイズで包まれていた。

ナノマシンがざわつく。何かと反発しているのか、嫌な感じだ。
おそらく、周囲の……霊障のようなものが、僕の視界に、干渉してきているのか。
マノ社のどこかなのはわかるけれど、ノイズが、焦燥感が、思考を狭める。

遠くから、許多さんの声が聞こえたような気がした。焦っているような。
でもノイズが強くて何もわからない。嫌な予感が広がる。

『はやくはやく』

『あのこがあぶないから』

オクトロータスの声が聞こえる。ナノマシンごしに僕に干渉してきて、身体を進ませる。

「あんた、確かアンフィニの僚機の」

不思議な色の壁の前に立つ、女性がいる。戦場で見たことのあるライダーだ。
声をかける前に、オクトロータスに動かされた僕の身体は、

『だいじょうぶ。きみはとおれる』

目の前の壁を”こじ開けた”

『だからあのこをたすけてあげて！』

「ワーーー！ワーーー！めっちゃゾンビきてるじゃないですか！ちょっとハウエルさんもどって！ひとりで対処できるレベルじゃないですってこれ」
「とりあえず倉庫フルオープン！エマさんたちも火器なりなんなりはバンバン使っちゃって大丈夫です！非常事態なので！」
『汚物は消毒！ナノ！』
「先輩！マスターキーあげますから手伝ってください！」