ENo.0042　ジル・スチュアート

――――セクション2、戦闘当日

格納庫に佇む、沈黙を続ける白いWH。
そしてそれを眺める少女と、漆黒のWH。

『本当に良いのか？』

「……うん」

『アレはただの抜け殻だ。あいつの魂は、あそこには無い』

「……知ってるよ、そんなこと」

『そんなことをして、あいつが……喜ぶと？』

「……」

すぐには答えられなかったけど……

「……思うよ。だって――――」

少女は、黒いWHに向き直る。

「私が生きていれば、なんでもいい。きっと、あの人は……そういう人だから」

憂いを感じさせる笑顔。

少女は白いWHに近づいて、そっと触れた。



　　　　　　　　　ごめんなさい



そう口から出かけたのをなんとか押しとどめた。
その言葉を言われるのはきっと、あの人の本懐ではないような気がしたから。
……だから。

「ありがとう。ずっと……まもって、くれて。　……でも――――」


「……おねがい」




「もうすこしだけ……そばにいて」


微動だにしない白いWHに、少女はゆっくりとその身を預けた。






残像。


それは、死んだものの影を纏い……呼び出しに応じ戦場に駆けつける。


いまだ残されたもののために。

5年前とあまり変わらない風景。
適度に整理もされており
WHのメンテナンスもしっかりと行われている。

……いつ、”そのとき”がきてもいいように。