ENo.0051　アンナロッテ

　第二セクション・ゲート攻略戦当日。眼が覚めて操縦棺から這い出したら、リリアンが黒いナース服を掲げていた。
「アーンナ！　脚換えたらレーダー積むのバランス悪いからこれ着てって！　ちょうどクリーニング出してたでしょ！」
「え、な･･････うわあああああああちょっ、な、なん、なんで知って」
『おやそれは懐かしの』
「クリーニング屋のおっさんに教えてもらったの。アンナにこういう趣味があったなんて意外だったけど･･････はっ！　もしかして秘密だった？」
『そんなことはないよリリアン。五年前からこっち、よく着ていたからね』
「え、いや、ちょっ、ちが、ちがう、ちがうからね！？　たまたま着る服がなかったときに、たまたまそれしかなかったから！　レーダーとしてやたら使えるし！」
『伝説のナース服だからな。当然だ』
「なんであんたが自慢げなのよ」
『ふふふリリアンは知らないから無理もない。かつてこの残像領域に虹を架けたナース服の男がいたのだ･･････』
　《創造主》がナース服伝説をリリアンに吹き込み始めた。リリアンは神妙な顔をして聞いている。たぶん笑うタイミングを図っていて、ちょいちょい確認を入れているようだ。「え、待って。女装？　女装男子なの？」『女装とかそういう枠に収まらない男なんだよ、彼は』《創造主》が真剣な声で続けるから、とうとうリリアンがこちらをちらちら見始める。リリアンが困っている。珍しい。そっとしておこう。身支度がてら着替えてくることにする。

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