ENo.0201　水槽の脳髄

《よっし、こんな感じ？　案外楽なモンだな》
「フライトユニット出力・高度とも安定、その調子です。
　現段階でこれだけの制御が可能なら、実戦でも問題は起こらないでしょう。対空砲とかはちゃんと回避してくださいね」
《あんなにドカドカ積んでそんな速度が出るならな！　まあこいつを思いっきり噴かせば1回は行けるだろうけど》
「培養槽と付属ミサイルポッドの搭載は本部方針ですから。ミサイル重量に対する規制強化が間近なので、今回がほとんどラストチャンスなんですよ。今のうちに試してくれって」
《それはわかるけど40発ってなんなの？　こんなに積んでるのろくすっぽ見たことないぜ、上位ブロックの記録映像見たらホントミサイルパーティーだったけどリロード挟んでるし》
「リロード機構を入れるか数を積むかを協議した結果、後者が勝ったそうですよ。
　先週も言いましたがだいたいの場合、ノウさんが武器とリロード機構を持つよりもノウさんから生産されるバイオ兵器をミサイルの弾幕の向こう側で強化した方が強いんです」
《俺みたいに白兎に思いっきり改造受けたヤツがミサイルと武器で荒稼ぎしてたって話は聞いてるんだぞ！？
　いっつもヒルコやマテベ傘下のヤツの方が向いてるからやめろって言うけどさ、絶対何か裏あんだろ！！》
「……そこまで情報を掴まれていたなら、もう隠しても仕方がありませんね」
《おっ、やっと吐く気になったか！　どういうこった一体？》
「ミサイル多用機は圧倒的な破壊力と一緒に、多額の弾薬費用請求が来ることはご存じですね？」
《えっ？　そうなの？　金とか気にしたことなかったわ、俺持ったことねえもん》
「……そういえばそうでしたね。
　まあうちの研究所にはお金が必要なんです。これ以上の予算は割けないという話がありまして」
《……あんなに白兎本社に貢いでんのに？》
「そこです。そこにほとんど全額を入れてしまっているので……」
《バカだろ！　この研究所のヤツバカしかいねえだろ！！？？》

生体脳使用ハイドラ『オーヴァルック』のサポート専門チームの待機所。
『オーヴァルック』帰投時は機体と生体脳の保全を行い、出撃時は戦果査定用の戦闘中継を見ながら手に汗握り、時には野次も飛ばす。