ENo.0071　アキラ・ハリアエトゥス

風のうわさによると、ついにあのパーツが出回っているという。

極めて重量負荷が高いものの、超強力な機体制御能力を与える付加効果ユニット。
その性能は現行モデルなら1揃い付けただけで俺の飛行ユニットA型に匹敵する旋回性能を与えるらしい。
5年前には出回っていたのだが、この5年の技術革新やら何やらでそれに相当するパーツが失われていたようだ。

……それこそ5年前には見向きもしないパーツだった。
当時の“パンディオン”は機動性を最重視した機体で、重量が増えるなんてもってのほか。
武装の選択もいかに軽量であるかを基本に見ていた。

だが今のバージョンの“パンディオン”は違う。
重装化が進み重くなった機体を、俺の飛行ユニットが持つ高い飛行性能で強引に飛ばす機体だ。
つまり、多少の重量増加よりもそれ以上に凄まじい旋回能力が、姿勢制御能力が得られる方が重要となる。

俺のような飛行性能に特化させたハイドラ乗りでなくても重量機なら積んで損はない……いや、積むべき品になるはずだ。
ノーリスクとも言える条件であらゆる点で機体の挙動が良くなるのだから。


「…………とはいえ。その重旋回モジュールが手に入らないんじゃな」


……そう。その絶大な性能を与えるパーツの最大の弱点というのは、今俺の手元にないという一点だった。

持ってない。
融通してもらうアテがない。
そもそも持ってる人を知らない。
っていうか実は存在しないんじゃないのか？

とにかく、無い物は作れないのである。


「この間の薄装甲のお礼にでも送ろうかと思ったんだがな……」


やむを得ず、今必要な射撃戦能力強化用のパーツを使って飛行ユニットを建造する。
曰く付きの設計図が付いた格闘特化の13号、11号の設計をそのまま流用した強化型の14号、ナンバリングを間違えた極軽量の15号ときてこれが16号となる。

5年前の最後のモデルが7号だったはずなので、舞い戻ってから作ったものの方が既に多くなっている。
生き残ることもだが、それ以上に今は最高の飛行ユニットを作り上げることが俺の目的になってるフシもある。

……酔狂な品だろうが、買う人間が居るということは理解は得られてるということ。
マーケットの更新後に重旋回が手に入ればいいのだが。

廃棄された様々なものが集まり、
それを目当てに人々が集まり、
集まるために様々な建物が増えていった地区。
ハイドラパーツの素材になりそうな質の資材も転がっているようだ。







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