ENo.0049　ソネル

「私がいなくなっても大丈夫か？」

「いつまでも頼りゃしねーよ、カフィ姐」

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操縦棺で目が覚めて出撃スケジュールをチェックする。
前回の戦場も大過なく戦い抜いた。だから意識は次の戦場へ。
見れば今回は部隊にEno146フレースヴェルカ、Eno47Unterlegene…よく見る名だし、後者はパーツも利用させてもらっている。
今回は比較的同配置になるEno60Lupthあたりはいないようだ…

もちろんそんなことより考えるべきことがソネルにはある。
Eno30ガブリエラとは、問題なく共闘出来ている。
だが帰投後はほとんど顔をあわせていない。

彼女が新しく得た肉体に苦闘しながらも努力を続けていることはわかっている。
ソネル自身が彼女を避けていることをわかっていることも、わかっている。

どうするか、という状態はとうに過ぎてしまって、ガブリエラはああして肉体を得た。
得ることができた？　得てしまった？
もはやそれは動かない事実であり、どうなるものでもない。
だからソネルの屈託は、畢竟無意味だ。

それにソネルとて、今の自分の思いを聞いてたからといってガブリエラがなんとも思わないかもしれないとも考えている。
考えているが、そうではない。そういう問題ではないのだ。

あの女の顔で、あれにもこれにも目の奥を輝かせるガブリエラを見続けるのか。
あの女の顔で、とぼけたような表情のまま胸を張るガブリエラを見続けるのか。
あの女の顔で、笑うガブリエラがどんな風にするのか、それはまだ見ていないけれども。

何より、不可思議にも一人の人間として成立しえたガブリエラ・ストークスは、
そうなったが故に、もはや一人で生きていく事のできる、普通の人間ではないか？
カフィネ・オレイラウのように、いつかどこかで姿を消してもおかしくはない一人の女ではないのか？

奇妙なる不可視の同居人だったガブリエラ・ストークスは、
これまで気づけば自分の前から消えている、消えることを受けて入れていた、誰かたちとは違った。
なぜならそれは亡霊のようで、残像のようで、不安定で、だから／だが確かに『いる』ことを思い知った。

しかし／そして、そうあることの行き着く先はこれだ。
今追いついてきた残像はある種の必然でもある。
ただそれがあまりにも明白な貌を持ってやってきただけだ。

大丈夫か、という声が夢でもないのに残響して、ソネルは一瞬身を震わせる。
実際に聞こえているのは、アワーオブウルフのうなりのような待機駆動音だけ。
弾丸のように駆け抜けてきた戦場の、唯一の錘。

気づかなければいけない。
考えていなかったのはガブリエラのことではない。
自分自身のことだと。