ENo.0110　『Phantom Beast』

時折、ボイスメッセージとして届く声に少しの親近感を抱いたのは、戦うことしかできないという一言を聞いたときだ。
正直なところ、それまでは気に入らないという認識があった――守られていればいいだの何だの、口にしていたから。
しかし。信じていたものが揺らぎ、不安定になったその声は、確かに口にしたのだ。
ヨナが繰り返し口にするものと同じ言葉を。

――戦うことしかできない。

己の意味を見失い、揺らぎながら吐き出された言葉は、ヨナの心を強く揺さぶった。
もしかしたら、声の主――デバステイター・センチネルと自分は、似ているところがあるのかもしれないと思ってしまうくらいには。
戦って相手を壊すことを楽しむ自分と、何かを護り救うために動くデバステイター・センチネルとでは、決定的に異なる部分があるから、きっと細かく見ていけば似てなんかいないのだろうけれど。

「……戦うことしかできないことの苦しさは、俺もよく知っているよ」

一人、虚空に向けて呟く。
自分が感じている苦しさと、今デバステイター・センチネルが感じている苦しさは違うものかもしれないが――“戦うことしかできない”者が持つ苦しさは、よく似ているだろうとヨナは予測する。
息をしていても、何をしていても、つきまとってくるあの苦しさと生きづらさは相当なものだ。

「……いっそ、戦って戦って、敵を巻き込んで死ぬことができれば楽なのにな」

口元に諦めたような笑みを浮かべつつ呟いて、そっと操縦盤を指先で撫でる。
最後の最期まで戦い抜いて、相手に食らいついて引き裂いて、そうして死ぬことができれば――きっと、この苦しさから開放される。
だが、それは望ましくないことであることもよくわかっている。
深く息を吸って、吐いて――ざわつく気持ちを飲み込んでから、いつものようにヨナはPhantom Beastと共に戦場へ駆け出した。


――グレムリンとの接触まで、もう少し。

――しんとした森の奥の奥深く。
簡単な墓がすぐ傍に作られている家屋の窓には、時折人影が映るらしい。

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主に自分用ユニオン。整備を中心になんやかんやしていく予定。