ENo.0021　『鉄喰み』

遺跡が、残像領域が、私達の戦争が、終わりを告げるらしい。
各企業、言説は違えど、大筋は変わりない。
シルウェストリスはとにかく逃げろという。
マテリアルベルトもとにかく逃げろという。
コロッセオは遺跡から脱出しろ、遺跡が臨界を起こすと残像領域が崩壊するという。

……どこへ？
仮に残像領域の崩壊が夢物語とする。
『奇跡的な』ハイドラライダーたちの活躍にとって何もかもがうまくいったとする。
しかし……空っぽな僕からこの戦争を抜き去ったら何も残らないと思う。

ルルちゃんは目的を達成できつつあるように見える。
その目的が終われば、彼女はハイドラライダーを続ける理由はないのだろう。
直接聞くのは恐れ多くてとてもできないが。
彼女に必要以上に深入りすることは、彼女の人生をむやみに食いつぶすことにほかならない。

彼女は絶対的に幸せになるべきで、僕には絶対的な幸せを与えられるように努力する義務がある。
僚機として。彼女を……想うものとしても。

僕が彼女に少しでも幸せを与えられると思うのはエゴだと断じることができる。
断じた上で、僕はそのエゴを満たせるように悪足掻きをするのだ。

ハイドラライダーは出撃さえすれば結構なクレジットを得ることができる。
ルルちゃんも、目的を達成するだけなら戦果は関係ないだろうし、
僕にべったり依存したとしても問題はないと思う。
僕はそれでいい、と宣言したのにもかかわらずだ。
なれば、ルルちゃんは多少なりとも戦果に拘る部分があるのだろう。
ハイドラの耐久も気にしている節がある。
僚機の僕が索敵特化――『知識の断片』の活用をするために戦場遠くから援護していることにより、
彼女の負担が上がっていることは否めない。
しかし、この索敵というやつは欠かすことができず、断片を得ないハイドラライダーは
センチネルたちを打倒することは難しいだろう。
まあ、失敗したとて優秀なハイドラライダーたちが引っ張ってくれるのだが。

つまり、彼女の負担を少しでも下げる選択をすればいいのだ。
どうせ終わる残像領域であるし、僕の命を捧げてでも――

命。
なんだ、簡単なことじゃないか。
EoJの咆哮は普段抑えてある。
好き勝手にやらせると、僕自身も危ういし、
無駄に敵の注目を浴びることになるからだ。
しかし、逆に見てみればどうか。
EoJの巨体は味方の防御を助くるに十分だし、
注目を浴びるということはルルちゃんの生存性を少しでも上げることに繋がる。
ハハハ。こんな近くに答えが眠っていただなんて。
EoJの操縦棺――ルルちゃんの写真を大量に集めた空間。
僕が『鉄喰み』でいる理由にして、いられる空間の一つだ。

もはやパーツをEoJのためにチューンナップする必要もない。
全てを喰らう、彼女には相応しい体系。すなわち、ベタ付けである。
それはさながら砂鉄に棒磁石を近づけた時のように、
不思議とEoJの身体にフィットした。
ファティマちゃん。
仄暗い過去を抱えているという噂だが、
僕にとっては優秀な索敵屋でしかない。
薄情ではなく、分をわきまえていると言ってほしい――
ともかく、彼女の作ったレーダー。
生きて帰ってきたならば、これは最高に優秀なレーダーとして
僕たちを支えてくれるはずだ。
今はまだその時ではない。
具合を確かめたレーダーを倉庫に押し込み、
代わりにミサイルを迎撃するためのレーダーを貼り付けた。

「行くよ、Eater of Junks。僕たちは……『鉄喰み』だ」
安全装置の停止。
EoJを抑えるものは何もない。
EoJがけたたましい咆哮をあげ、発進する―――

廃棄された様々なものが集まり、
それを目当てに人々が集まり、
集まるために様々な建物が増えていった地区。
ハイドラパーツの素材になりそうな質の資材も転がっているようだ。







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無論『鉄喰み』にコンタクトをとってもよいです
（性質上即時対応にならない可能性は高いけど）