ENo.0196　アマレット

（僚機のEno.193 インシオンの日記とリンクしています　かっこいい戦闘はあっちを見てね！）




『ステ――――カー、応答を――、本隊に合――てくれ』
『――だけ――先に―――、僕が―――――』
『クソッ！！　―――こんな――、そ――にはコロニーが―――――』

　二年ぶりに聞いたグレンの声は、ノイズでぐちゃぐちゃになったものだった。
　残像機はその機体に染みついたことをただただ繰り返すらしい。
　それがぼくらが追い詰められたときの、それこそ最期の瞬間だなんて、あんまりにあんまりだ。
　グレンはずっと、ここにいない”星喰い”との戦いを続けてきたっていうのか。

　電子制御されているはずの手が震える。でも、やらなきゃ。
　そのために僕らは、この霊場だらけの戦場にやってきたんだから。

『アム！　レイ！』

　インシオンさんからの通信が頭にがんがん響く。『チェルノボーグ』と『ベルボーグ』の助けを得て、
　ぼくは『ステラブレンダー』の至近距離にまで近づいた。
　神経接続を介して操縦回路を叩く。起動させたのはこのために積んだ粒子スピア。
　止めてみせる。この一撃で、確実に！！

「いっけぇーーーーーーー！！！！！！！！」

　小型機を揺るがす射撃の反動。それは錆ついた細身の機体を掠めて、行く手を阻んで、地に倒させた。








「グレン」

　名前を呼ぶ。反応はない。……そりゃそうだ。
　コクピットの風穴から潜り込んで、ライトを向けて、ぼくはようやくグレンに会うことができた。
　グレンは操縦席で俯いたまま動かなかった。
　服は劣化しているけどどこも破れてはいなくて、傷らしきものもなくって、きっと大破で酸欠になったんじゃないかな……って思った。この状況をどこか上のほうから見ているような気分だった。
　髪の毛はかなり減っていて、肌が黒ずんでいて、なんだかとても小さく見える。覗き込んだ顔は、しわしわしていておじいちゃんみたいだった。

「迎えに、きたよ」

　やっとのことで声を出して、ようやく、グレンは本当に死んじゃったんだなあって実感がわいてきた。
　もう寒いも暑いもないんだろうけど、なんだか寒そうに見えたから、ぼくの上着をかけて。
　2年前までは動いてた心臓のあたりに手をあてて、声ががらがらになるまで、泣いた。









『エレさんの不思議な力で、グレンを、『ステラブレンダー』を眠らせる事って、できますか』

　僕の頼みに、エレさんは通信機越しに「わかりました」って静かに答えてくれた。
　エレさんの力は、物語の中にいる魔法使いみたいだ。虹色の蝶を飛ばして、ぶわーっと、ふしぎな奇跡を起こすことができる。
　だから「死者を眠らせる」なんて、オカルトそのものな頼みをついしてしまったんだけど――

「うわっ！？」

　突然足場が消えて体が宙に浮いた。
　『ステラブレンダー』が、そしてグレンの体が光の粒に変わって、虹色の蝶がそれを導いていく。
　ぼくはレイさんの『ベルボーグ』にうまくキャッチされて尻もちをついた。

「きれい――」

　素直にそう思った。しばらく見ていなかった星の光みたいで。
　やっと戦いから解放されたグレンは、ちいさくきらきら煌めいて、ふわっと空にのぼって霧に溶けていった。

無口なおばあちゃんがやってる駄菓子屋だよ～

品揃え豊富でどれもどこか懐かしい味！休憩テーブルつき！

駄菓子、やたら薬臭いって言われるけどそんなするかなあ？