ENo.0009　ヴィンス・ナイトレイ

　
　時々、『どうしてそこまで働くんだ』と問いかけられることがある。

　どうしてと言われても、そうするべきだと思ったからとしか返答できないのだが、それだけでは納得してもらえずにいつも困っている。簡潔に付け加えるにしても、以前からこうだったとか、その程度のことしか思いつかない。

　働き始めたきっかけは……そう、両親だ。両親が居なくなって、あまり笑わなくなった兄弟たちに、せめて不自由のない暮らしをさせたかった。
　俺たちは所謂戦争孤児になったけれど、幸い、住む家も育ててくれる人も見つかった。それでも頼りきりというわけにもいかないし、余裕があればいつかきっと自分のやりたいことを見つけて、幸せに生きられるだろうと思った。だから働き始めた。それだけのことだ。

　それに、仕事をするというのは、俺にとっては辛いことではない。元々誰かのために動くのが好きな性分だったのかもしれない。働けば誰かの力になれるし、得た対価で家族を豊かにできる。俺にとっての幸せはきっとそこにある。

　けれど、ハイドラライダーになってから少し環境が変わった。得た対価を次の戦闘で得る報酬のために投資したり、誰かのためと単純に割り切れない理由で戦うのは……難しかった。急に自分がわからなくなるような感覚がぐるぐると巡っている。

　今、『どうしてそこまで働くんだ』と問いかけられたら、俺はなんと返すべきなのだろうか。どの答えが正解なんだろうか――


　……そういえば、寮に置き去りにされていた机の引き出しの中から、封筒を見つけた。湿気てインクがボケてしまっているが……遺書のようだった。

　まだ開ける自信はない。

「皆さんこんにちは！病み上がりの方々は大丈夫ですか？」

「ある程度保険……というほどでもありませんが、治療の手配は行えますので、ぜひ頼ってくださいね！」

「まぁ今回は結構治療院に向かった方が多いので書類が多いのですけど（※画面はイメージです）」

「ってええ！次回はまたセクション攻略なんですか！忙しいじゃないですか～＞＜」







仮面の男の近くのモニターが光る

「おや、お客さんですか？ようこそマノ社へ！あわただしくてすみません。どういったご用件でしょうか！」