ENo.0096　オルト・イスケー

今回の戦場は酷かった。曰く暴走しかけているという、煙を吐きながら明後日の方向によろよろと飛んでいくアンフィニちゃん──Balarを追いながら、2、3戦場……ひょっとするとシルウェストリスの作戦範囲を全て回ったかもしれない。
そこら中それこそ悲惨な様子で、少し前にフィズとかいう担当が言ってた通り「シルウェストリスの突入部隊は壊滅的な打撃を受けている」じゃないけど、そこそこランカーが集まった戦場でもボロボロだし、そうじゃないとこは全滅みたいな状況だし。

途中でエマさんとフィガロさんたちの所にも飛んだけど、彼らも苦戦してるみたいで、おもむろに吹き飛んだのも見えたけどどうにか退避してたみたいだ。あとでお見舞いにでも行こう。

アンフィニちゃんの機体も、僕のオクトロータスもボロボロだ。いつ墜ちてもおかしくないし、もっというと"すでに墜ちていた"のかもしれない。
というのもカオリンが教えてくれるまで気づかなかったんだけど、何度か“攻撃を受ける直前で通信が断絶し、しばらくすると何もなかったかののように通信が再開されている“んだとか。
こっちからは通信がとだえた風には思えなかったのだけど、もしかしたら気づかないうちに墜ちてて、でも何故かまた飛んでるのかもしれない。なんてね。
そんな訳の分からないことでもまかり通ってしまいそうなくらい、状況は混沌としていたって感じかな。

「あ、アンフちゃん聞こえる？そっちは──」
戦場の終盤も終盤、動くものも少なくなってる戦場をフラフラ飛ぶ白い球体……その行先に、生物を混ぜ合わせたような敵機体、先程からよく分からない攻撃で他のハイドラを撃墜させている『ドゥルガー』が待ち構えているのが見えて。

「少し距離を取ります。」
「あ、わかった」

当たり前だけど危ない。距離をとってそのまま迂回するのか、と安堵しかけたら──

「捉えました」
「ほへ？」

勢いをつけるかのように急加速、距離をつめ、ドゥルガーの中心……黒い目みたいになってるとこ目がけて機体ごと突っ込んだ。通信から聞こえてくる、アンフィニちゃんの、いつもと変わらない声。

「二度と戦場で出会わないことを祈ります。…貴方も祈ってくれますか？」

──崩れ落ちるドゥルガーの姿と、空中にぽかんと浮かぶ小さな白い瞳だけが残って──


「僚機、見失ってませんか？」

そう通信があるまで、もしかしたら数分、あるいは数瞬。その、まるで白昼夢みたいな光景を、ぼうっと見つめてしまっていた。

「皆さんこんにちは！病み上がりの方々は大丈夫ですか？」

「ある程度保険……というほどでもありませんが、治療の手配は行えますので、ぜひ頼ってくださいね！」

「まぁ今回は結構治療院に向かった方が多いので書類が多いのですけど（※画面はイメージです）」

「ってええ！次回はまたセクション攻略なんですか！忙しいじゃないですか～＞＜」







仮面の男の近くのモニターが光る

「おや、お客さんですか？ようこそマノ社へ！あわただしくてすみません。どういったご用件でしょうか！」