ENo.0176　カヴネル・レビン

「ニ、ニーベ！？　…やられたのかッ！？」
「…ッ、無事だといいが…。」

機体と同じ色の煙を噴き上げながら撤退していく僚機『ナイトアンセム』を見送り、オレはデバステイター・センチネル、メルポる…≪ΜΕΛΠΟΜΕΝΗ（メルポメネー）≫の次の攻撃に備える。

メルさん（めんどくさいからそう呼ぶことにした）が忌々しい光輪を放つたびに、一機、また一機とハイドラが撃墜されていく。何が何でも最後まで食らいついてやる。それがオレの、出来る限りの復讐だった。

今の相棒（ライトニング）は生存性にすべてを賭したアセンブルをしている。
まず脚部を変え、いつもの軽二脚からヒレ状の飛行ユニットに置換。この頼りなさそうな脚でも機体を支えられるようにするべく、各パーツも可能な限り軽いものへと置き換えた。

なぜ？　通常、機体は軽くなるほど脆くなりやすい、というのが常識だ。
だが、不可思議な力――霊障と呼ばれる攻撃への耐性を、飛行ユニットの脚部への装備、そして軽量化によって極度に高めることで、ハイドラは特殊な機体状況を示すようになる。
それが霊魂律動。ハイドラが致命的な一撃を受けた時、損傷を最小限に留め、耐えることができるというものだ。
どうしてそのような現象が起きるのか？　…オレにはよく分からない。
ただひとつ。分かったことがあるとすれば――

こいつがなかったら、オレはオルゴイコルコイのやつにバラバラに引き裂かれ、相棒は焦げた鉄クズにされていただろうから！

あれはマジで死ぬかと思った…。
一応、相棒の緊急脱出装置は自動モードになっていたものの、受けた痛みはレッドドラゴンの炎をはるかに超えていた。もっとも、あの時はいろいろと特殊な状況だったせいもあるが。

かくしてオレは、撃墜されることなくメルさんたちに打ち勝ち、セクション・5への扉が開くのを見届けた。そして――

「うおっ！？」

直後。激しい振動が襲い掛かり、着陸直後の相棒をグラリと揺らした。とっさに相棒の腕を地面に突き立てて、転倒を防ぐ。

一体、何が起きた？　戸惑い立ち止まっていると、再び振動が走った。更にしばらくすると、また。揺れは左右交互に起きていた。
これはまさか、遺跡が…歩いている？

企業連盟の連中が大騒ぎしているのが、通信越しで分かる。それだけじゃない。メルさんまで、これまでの態度が嘘のように混乱してやがる。…どうやら、面白いことになってきたようだ。

どうやら今後、ハンガーまで往来するのは難しくなりそうだな。

そう心の中でつぶやきながら、オレはゆっくり変わっていく遺跡の外の景色をぼんやりと眺めていた。

［状況報告］
戦況の変化に伴い、最小限の荷物をサルガッソーの格納庫に移転。
今後はこの新しい格納庫を拠点とする。
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［説明］
飾り気のない格納庫。その奥には、黄色い機械仕掛けの竜が佇んでいるという。
拠点として利用したいなら、ここの所有者に申し出てみるのもいいだろう。

看板には次のように書かれている。

ここを拠点とする者は、以下の恩恵を受けることができる。
・訓練は基本的に制御のみだ。
・購入は主に追加素材、または機動力強化が中心だ。
・ブックメイクは原則行わない。

オーナー：Eno176