ENo.0146　フレースヴェルカ

いつか。

手に届くだろうか。

その手に乗せられるだろうか。

私にはきっとわからない。


戦闘中は、酷く冷静でいられた。なぜだろう。単純になれただけかもしれない。
あまり良くない傾向だろうな、とは思うけど。でも、生き残るためには必要で。
周りを見ながら、ただまっすぐに飛ぶ。それだけだった。
実際それくらいしかできなくて、よくわからない武器をたたきつけるくらいになる。
なんとなくの確信はあった。他の武器ではこうはいかない。これだから、いけるのだろうと。
カスタマイズして性能が変わったとしても、これだけは制御できる。
そんな確信があった。

けれど、降りるたびに、それが本当に現実なのかがあやふやになる。
確かにその空を飛んでいる記録が残っているし、記憶も残っている。
でも、あやふやになる。
理由はわからない。本当にわからない。
今思えば、他の人はどうやってハイドラに乗ろうと決めたのだろう。
メーテルメテルカはわたしに一度その事を問いかけた。
わたしは、答えられなかった。
実際答えるためには何もかもが足りなかった。


「…………わたしって、なんなんだろうね」


一人、その声を空に返す。
いつも返事は在るとは限らなかったけど。その時だけはほしかった。
でも、そういう時に限ってその返事はなかった。
実際には満足する応えは無いと思ってるけど。気休めにしたかった。

……また、出撃の時間がくる。


「……帰ってきたら。また、調べ直そう」


きっと。
思ったよりも時間がないんだ。
生き残る時間がもっと、ほしい。
もっと。

壊れてしまった、もはや時代遅れ、彼氏にフラれた腹いせ。
あれこれの理由で積もったジャンク品の山の中。
打ち捨てられたようで、実はとても手入れの行き届いた三段櫂船型ハイドラが……無い。何処かへ消えてしまったかのようだ。
ある一人の幽霊が、それについて聞かれるとニヤリと笑う。




「どこだと思う？メテルカならわかんじゃねえかな。」