ENo.0201　水槽の脳髄

《……》
「ノウさん、もしもし？　ノウさん？」
《…………》
「タヌキ寝入りしてもダメですよ、ちゃんと考え事してるって脳波に出てるんですからね」
《……チッ》
「しかし珍しいですね、そういう波形はずいぶん見たことがなかったから、一瞬異常事態かと勘違いしちゃいましたよ。まあ珍しいってことを言えば異常なんですけど」
《お前俺を何だと思ってんだよー！！》
「まあまあ。さっきの話については謝りますから、何を考えていたのか聞かせてくれませんか？」
《んー？　ポチのことだよ》
「またデバステイター・センチネルですか？　最近ずいぶん通信の頻度も増えましたから、無理もないですが……」
《だってあいつ最近なんか変じゃん！　ウジウジ悩んでばっかだしよ。俺はそういうんじゃなくて、もっと強そうで凄そうなあいつが見たいんだよ！》
「それでこそ俺の宿命のライバルに相応しい」
《そうそう！　それｄ……えっ？　なんでわかったの？　脳波ってそこまでわかんの？》
「いえ、単純に後に続きそうなことを考えてみただけなんですが、まさか合っているとは」
《分かってんなら話が早いじゃ～～ん！！
　俺はさ、あいつが俺のライバルらしい態度を取って欲しいんだよな！　最初の通信の時のあいつとかホントそんな感じだったぜ！？》
「ノウさん、人にそんなこと望んじゃいけませんよ。だいたい叶いませんから」
《えー！？　なんだよ、急に大人ぶったこと言いやがって！》
「だってノウさん、考えてみてください。もし僕がこの場でノウさんに『実験体らしくしていて欲しい』って言った場合」
《絶対やだわー、何時間かこの調子で延々喋り続けるとかするわー。俺疲れる口とか喉とかねえもん》
「でしょ？」

生体脳使用ハイドラ『オーヴァルック』のサポート専門チームの待機所。
『オーヴァルック』帰投時は機体と生体脳の保全を行い、出撃時は戦果査定用の戦闘中継を見ながら手に汗握り、時には野次も飛ばす。