ENo.0201　水槽の脳髄

《うわわわわ何だコレ！？　えーっとこの……ハイドラ乗ってる時みたいな……攻撃喰らった時みたいな感触、何！？》
「大丈夫ですかノウさん！？」
《俺自分じゃわかんねーからとりあえず点検頼むわ！》

《……えーと？　何？　もう一回言って？》
「ノウさんに問題はありません、問題はさっきの振動の原因です。
　この残像領域北部遺跡そのものが、動き出しているんですよ。変形式二足歩行で」
《……何？　巨大ロボットで戦ってたらそもそも乗り込んだ敵のアジトがそれ以上の巨大ロボットだったの？》
「大正解です。
　いやあ、戦うロボットアニメコレクションがこういう事態の予行練習になるとは思いませんでしたね。誰だか知りませんが、遺跡の建築者は巨大ロボットの浪漫を分かってますよ」
《先週俺をアニメの見過ぎだっつったのはそっちだろーが！！！》
「……まあそこはどうでもいいです。
　これからの戦いに必要なのは、この振動がこれからずっとついて回ることですよ」
《また話逸らしやがったぞコイツ！！
　……まあその通りなんだよな、正直俺もカメラ揺れててあんまお前の顔見えてねえんだよ》
「このベースキャンプ、こんなに大規模振動が続くことを想定してないんですよ。
　残像領域外には地震って現象があるそうで、例えばそれがあってもいいように建物や家具の強度設定をしておくとか、振動感知システムを配備して警報を鳴らしたりするそうなんですが」
《さっき、警報1ミリも鳴らなかったよな。なんか俺が死にかけたりとか逃げようとしたら鳴るのに》
「そういう警報系も配備されてませんね。何せ想定外なもので……
　とりいそぎ、最優先でこの戦況に合わせたハイドラの改修を行います。とりあえずハイドラに乗れば前は見えるようにはなるはずですし、レーダーもこの振動での誤差が出ないようには整えますよ」
《おっ、待ってたぜ！　これで出撃は中止ですなんて言われたら俺何して待ってりゃいいか分かんねえよ！》
「ノウさん、基本的に出撃してもバイオ兵器が戦果持ってくるの待ってませんか？」
《そういうアセンブルしてるのお前だろー！！！！》

生体脳使用ハイドラ『オーヴァルック』のサポート専門チームの待機所。
『オーヴァルック』帰投時は機体と生体脳の保全を行い、出撃時は戦果査定用の戦闘中継を見ながら手に汗握り、時には野次も飛ばす。