ENo.0308　霧中ネネ

っと、これで撮れてるかな。
えーっと、コホン。
改めまして。霧中ネネです。ま、知ってるか。

さて、あと遺跡の調査が大詰めを迎えて、ネネとマテ発との契約もそろそろ満了することになります。
そうすると、ネネとサクラバくんももちろんバディ解消ということになるね。
色々といいたいことがあってこうしてビデオレターみたいな形にしています。
ほんとは、手紙とかのほうがいいのかもしれないけど、ネネが一番ネネらしく、言葉を伝えられるのはやっぱりこういう形式なんじゃないかな、と思いました。
最初にバディをつける、といわれたときは信用されてないんじゃないか、と思って正直イラっとしたんだ。まあ態度に出てたと思うけど……君はそういうのあまり気付かないかな。
今思えば、ライセンス取り立ての新米を信用するほうがおかしい、とは思うんだけど、当時はそう思ったってことね。

まあそれから、いろいろあったけどとにかくサクラバくんの言動はネネにとっては……新鮮……いや、意外な……うーん…とにかく理解しにくいことが多かったな。
その辺は大方伝えてたと思うけど。伝わってるかどうかはともかくね。
最初は宇宙人かなんかなのかと思った。あまりの意思疎通のはかれなさに。
もうずいぶん前のような気がする。ちょっと懐かしいかな。
霧中のことを理解するために、なんていって休日にショッピングについてきたときはほんとどうしようかと思った。でもまぁ、君は君なりに、距離の測り方がおかしいけど、ネネに歩み寄ろうとしてたんでしょうね。
それはそれとして、起きたら蕎麦打ってるのは本当に理解できなかったけど。

さて、これまで曲りなりにもバディとして、僚機としてお互いなんとかやってこれたと思っています。
……正直なところ、ネネの操縦技術はまだまだ拙いから君に前線を張ってもらってよかったと思っています。
最初は負けまいと気張ってたところはあるんだけどね。どうにもならなかったなあ。

うーん、ちょっとずいぶんとりとめのない話になっちゃってるね。
何を言いたいのかよくわかんなくなってきた。

えーっと要するに……
ネネはこの契約が終わったら、たぶんもうハイドラに乗ることはないと思います。
理由はいろいろあるけど、そもそも動画のネタ用にちょっと他ではできないようなことをするために始めたことだったから。
当初想定してたより、思いのほかウケはしたけど、それでもやっぱりコストと結果が見合わないというのが大きな理由かな。命賭けて得られるほどのものではなかった、とでもいいますか。
とにかく、少なくとも動画のネタにつかうことはなくなると思う。

だから、結果はどうあれハイドラの僚機の関係はもうすぐおしまい。
清々するかな。私は……どうだろ。ちょっとまだわかんない。

サクラバくんはこれが終わったらどうするのかな。
軍に戻るのかな。これしかできないっていってたしね。

ここからは私の勝手な独り言なんだけど。
人間、これしかできない、ってことはないと思うのね。
サクラバくんには軍人よりも、もっと何か……それが何かは全然、私にはわかんないんだけど、まだ見つけていない適正のある仕事とか、あると思うんだ。
たぶん君はかたくなに、俺には軍人しかない、と思っているとは思うんだけど、そういう性格だから。
でも、もし何か思い当たることがあったり、少しでも現状を変えたい、と考えることがあるんだったら、一度でいいから君自身の可能性について、思いを馳せてみてくれたらな、と思います。
そうだ、ボディーガードとか、SPとかだったらどうかな。命張る仕事なのは変わりないけどね。以前記者と話すときについてきてくれたの、頼りになるな、って思ったから。
融通の利かなさは、活かせるんじゃないかな。
もし、何かやりたいことが見つかったなら一人で考えるんじゃなくて信頼できる相手に相談するように。一人で考えるとね、絶対いい方向に転がらないからね。

うん…そうね。なんかお別れの話みたいになってるけど、そういう趣旨じゃないつもりだったんだけどな。
慣れないことはするもんじゃないね。
伝えたかったことの半分も言えてない気がする。

えーっと、それで、一番言いたかったことなんだけど。
今回の契約が、最後までちゃんと終わったら、何か一つだけ、言うこと聞いてあげよう。
これまでバディを組んでくれたお礼みたいな…ま、そういうことね。
もちろんなんか、私の人権に触れるようなことはNGだけど。
ま、サクラバくんはそういうこと頼んでくるとは思わないけどね。
これが、霧中ネネこと田中良子としての、一つのけじめだということで。

あ、これ見たら消すこと。残しておかないように。恥ずかしいから。

それじゃ、また、次のミッションで。バイバイ