ENo.0049　ソネル

どこかで太鼓のような音がする。
長雨とともに続く遠雷。
通信に混ざるノイズは増え続けて、ソネルは何度も思い出す。五年前のことを。

ガブリエラは、現状をそれほど深くは考えていないようだった。
オリジナルの『ガブリエラ・ストークス』である篠崎菖蒲とやらのことをサルベージし続けている。
異様な状況とて何が異様で何がそうでないかの基準がそもそもなければそれほど意味のあることではない。
そりゃそうだろうとソネルは思う。
それに突然人間が一人湧いて出てきた以上、ソネルとしてももはや何だって不可思議とまで言えなくなってきた。

どちらにせよ、両者ともその存在証明は戦場にあるのだから、そこから離れることはない。

遠雷の中、ソネルは久しぶりに自炊していた。
できないわけではないし、中華料理屋にいくという方のタスクはすでに果たした。
次にすることと言えば自分で作ったものを食べさせることがまず思いついた。

勿論ストリートでその日暮らしの頃に料理などする機会はない。
料理というのはそれなりに有形無形の元手というものが必要だ。
だからこれも『彼女』の置き土産だ。

食事に呼んだ時、彼女はどんな顔をするのだろうか。