ENo.0096　オルト・イスケー

　こないだエモリさんに助けてもらったあと、マノ社に送ってもらったら当たり前だけれどものすごく怒られた。並列思考を積んでいても……緊急時は思考が凝り固まってしまうし、視野は狭くなるものだと実感した。許多さんにはもちろん、ルオルカ先輩にもものすごく怒られた。あとで聞いたことだけれど、昔にもアンフィニちゃんが狙われて、代わりにお姉さんが死んでしまった事件があったらしい。こないだ 許多さんが言ってたやつだ。
　襲われた時、咄嗟に「アンフィニちゃんが危ない」と思ったのは覚えてる、けどどういう思考でそれに至ったのかを忘れてしまって、弁明に苦労した。でも確実に僕は何かしらに誘導されてあの状況に陥ったと確信しているし、きっと許多さんを呼び出すようにおびき出されていた、と思っている。多分僕からだけだと情報は少なくて、リオリカさんとか 許多さんのところでは情報がまとまってきているような気がする。
　それはそれとして、生体維持に使ってた胴体を仕方がないとはいえロストしたのは痛かった。……そもそも胴体がないとハイドラの操縦もままならないので、急遽本社からスペアの胴体を持ってきてもらったりなどしていた。生体電池機能で多少ENが貯められる仕組みになっているらしい。いざというときはこれで殴れって冗談ですよねルオルカ先輩？
──アズさんは「計画が多少早まったが誤差の範囲だろう」とかなんとか言っていたけれど、どうにもまだ未完成のところがあるようで、一日の半分はナノマシンで満たされた培養漕につけておかないと動きが悪くなってしまう。
　隣の漕には……アンフィニちゃんの義体が浮かんでいる。お披露目はまだらしいけど、彼らがとても心待ちにしているのは伝わってくる。BBQの時とか、今回の料理大会でも、気にしないようにしているのはわかってたけどやっぱり物寂しそうな時があったから。
　ルオルカ先輩曰く許多さんの奥さん？彼女さん？のおでんがすごくおいしいらしい。僕も気になるし、今度作ってもらいたい。
　オクトロータスは最近領域殲滅が安定してきたのか、だいぶしっかり動けるようになってきた。こないだのデバステイターにも、外れたかと思ったら上手く当たってたこともあったし。どうやら生体電池まで使って高圧力で貯水を吐き出すことで効率的に動けるようになってるとかイェツカさんが言ってたような気がするけれど、それにしても少し前とは見違えるほど動きがよくなっているような気がする。領域殲滅が合ってるのかな？

「いやぁ～お客様が多いと仕事のし甲斐があっていいですね～」
「ファティマさんも報告ありがとうございます！サルガッソ事業所、サルガッソ自体が動き始めてるんですけどまだまだ元気に営業中ですからね。缶詰は好評……っと」
「あーでも大豆肉の方はなんかぼろくそなアンケート来てましたね……まだまだ調整が必要なようです」
「フィッシュアンドチップスかぁ……揚げ物のパリパリ感を残すの難しいらしいので開発部の頑張りどころですね……」
「ところでねこさんすごいかわいいので撮影したいんですけどバグらないように撮るの難しくないですか？」