ENo.0096　オルト・イスケー

「縺薙ｌ縺ｯ螟懈?縺代?諢丞ｿ励〒縺ゅｋ縲√≠縺ｪ縺溘?逵溷ｮ溘?雍?↓驕ｸ縺ｰ繧後◆」

ま…ずい！と思ったのはそれが掠めた後で、
瞬間、強い衝撃がオルトの細身の身体を吹き飛ばし、アスファルトの上にたたきつけた。
赤く、液がにじむ──

◆ ◆ ◆

いつものように、あるいはいつも以上に霧の濃い路地を歩く。
ようはちょっとしたお使いのようなもので、ただ次に用いるパーツを手配してくるだけ、だったのだが。

──ううん、ちょっとこまったかな？

足元を冷たく湿った風が通り過ぎる。あまりにもゾンビ？が多く、遭遇しないように歩いていたら、いつのまにか袋小路に誘い込まれた形になってしまっていた。そもそもオルトはまだこの辺りの道を完全に把握しきれていたわけではなかったのと、想定していたよりもはるかにゾンビが多かったのと。
もう少し時間が経てば多少霧は晴れて、日が差すだろう、それまでどうにか凌いで……

「縺雁燕繧呈ｮｺ縺励※繧?ｋ！」

物陰から突然飛び出してきたゾンビは明らかに”オルト・イスケ―”を狙っており、唸り声をあげながら、勢いよく腕を振り下ろした。

◆ ◆ ◆

地面の低いところを、生首が走る。
否、逃げている。群れるゾンビから。オルトの髪の毛はナノマシンにより自在に動き……首だけでの逃走を可能としている。
襲い掛かってきたゾンビが分離させた身体に気を取られている間に、できるだけ早く、遠ざかるように。
だが路地にはまだ他のゾンビがひしめき合い、また首だけで可動できる時間も長くない。

「だ、れか……」

助けを呼ぼうと、するも既に息は切れていて。
……そもそも酸素を供給するための胴体と切り離されてしまっている以上、酸素の無駄遣いは避けたい。
（マノ社に連絡して？）（許多さんに？いや……）

──危ないのは、アンフィニちゃんだ

並列思考を走らせて最適な手段を探す。僚機である 許多を呼べば危機を逃れる可能性は高いだろう、
しかしオルトは”そう誘導されている”ことに気づいた。気づいてしまった。
それゆえマノ社に助けを求めることをためらった。ただ助けを求めるだけでは彼女を…アンフィニを危険にさらしてしまう。
念のため思考の片隅で少し別方面に連絡を試みはしたが、望みは薄い。彼らはいちいちこんなことに出張ってくるほど暇ではないだろう。

であるからして、いまだにオルトの置かれている状況が危機的であることには変わりはなく──

……そしてまた、絶体絶命の状況に直面することになる。

──囲まれちゃった、か

目前には数体のゾンビ、狭い路地をふさぐようにひしめき合っていて、ざりざりと、不快な音をたてながら身体をひきずっているのがわかる。
また後方には、先ほどからオルトを追っているゾンビ、その手先は橙色に染まっていて、置いていった胴体の末路が想像できる。今後自分がどうなるのかも。

──さて、どこまで破壊されてもメモリは保持できるかな……なんて

決死の突破と逃走でもしてやろうかとし腹をくくった、その時、

「ウチのシマを荒らすない！」

一台の武装モービル（一人乗り）が前方のゾンビの群れを薙ぎ倒した。

「わ……」
「はー。大丈夫ですかナ？っと」
「あ、はい。おかげさまで」

つい普通に返事してしまったが、助かったのは本心からで。
武装モービルから顔を出したのは水色の長髪を風になびかせた女性だった。よそ見運転もびっくりなモービルさばきで、ゾンビをなぎ倒しつつ……霊障か何かだろうか、彼女の近辺のゾンビたちがのたうち回る。

「なんじゃあこりゃあ…ヒューマノイドさんですか？いやちょっとだけ反応があるナ…バイオ合成ニンゲンさん系ですナ？」
「ほえ？……あ、そんな感じです」

──そういえば 許多さんがこの辺りの自警団の人が…って言ってたな

「そんなトコですナ。ところで……こいつらなかなか死なないナ…。君、所属は？マノ社かナ？」
「そうです！マノ社のオルトです。オルト・イスケーです！」

モービルのランプが光る。
後方から来ていたゾンビも、霊障で絞めあげながらオルトを拾い、モービルの後ろに乗せる。

「じゃ、とりあえずそこまで送るから……落っこちないように気を付けてナ」

そうして颯爽と路地を後にした。しぶとくモービルに取り付こうとするゾンビを吹き飛ばしながら。

「どうでしょうか皆さん！評判と運が良ければ製品として採用もありますよ〜。缶詰のアレンジレシピ担当の人がネタ探しで虚ろな目してたんで」
「あっストラフさんは手際よく魚とポテトを揚げ始めましたね。フィッシュアンドチップスでしょうか」
「何やら完成品の前で腕を上げて……？！！高いところからハーブソルトをふりかけている！どこからともなく装着したサングラスも相まって中々の芸術点が感じられます」