ENo.0046　ファティマ

　最近、ウォーハイドラの整備が、ちょっとだけできるようになった。そのほとんどは、マノ社の整備担当の人に、やってもらってるけど、レーダーとか、索敵に関する配線とか、回線のチェックとかは、自分で8割くらいやってる。でも、最終チェックは、整備担当の人に、お願いしてる。
　やっぱり今でも、ブリーズ宛に、ドラゴネットからの通信が絶えない。なので思い切って、ドラゴネットからの通信をブロックした。これでブリーズに届く通信は、知り合いか、遺跡調査に出ているライダーだけ……に、なると思う。多分。
　ここまでやって、満足したときに、ふと小型端末のことが頭に浮かんだ。レッドさんからの、手紙と一緒に、届いていたはず。ジルさんの家に向かうときに、使おうとしていたけど、せっかくだし、このタイミングで、新しくすることにした。今まで使っていた端末に、登録されているアドレスを、もらったナビゲート機能が付いている方に入力して、全員に、アドレスが変わったことを、テキストメールで伝える。それが終わって、一段落ついて、古い方の端末を、思い切って踏み潰した。ブーツのヒールが、液晶にヒビを入れて、食い込んでいって、大きな穴が空いた。悲しくも、何もなかった。ちりとりで回収して、ゴミ捨て場に置いておいた。

　なんだか、ウォーハイドラに、ミストエンジンを載せないアセンブルが、人気だって聞いた。エンジンレス、と呼ばれているとか。エンジンの重さが、機動力を増やすのに邪魔、って人や、とにかく速さを追い求める人が、エンジンを取り外しているらしい。この前、そういう機体で、索敵をしていた子に、話しかけてみたけど、わたしはまだ、エンジンレスについて、理解できていない。
　正直、とても怖い。保証、と書かれたブースターを、3つ接続していても、エネルギーの光が漏れるのを、どれくらい先まで伸ばせるか、全く検討がつかない。それでもわたしは、エンジンレスにするって決めた。一刻も早く、索敵を届けて、エンサイクロペディア・フラグメントで、みんなを助ける。戦いを、早く終わらせて、ジルさんのいる戦場に移動して、索敵を届ける。そうしてくれって、頼まれたから。だから誰にも、不安な顔は、見せたくない。

　今回のブリーズは、脚部を軽多脚にしている。軽多脚でエンサイクロペディア・フラグメントをすると出る効果は、狼の群れ。何が狼なのかは、知らないけど、その力が、みんなを導いてくれると、信じてる。

【ファティマ、新しい端末を使って、セクション・3への意気込みを記す】

ディスプレイはいつも通りデバステイターの情報を表示しているが、画面上の宿禰は物憂げな様子である。
「エマさん、心配ですよね、というか……」
少し言いよどむ
「えっと、先ほどモスキート…が帰投したのですが、その、なんというか……」
「う～～～ん、やっぱり本人から説明いただいた方がいいですね、よろしくお願いします」
画面は切り替わり、格納庫内のモスキートが映し出された。