ENo.0117　ワジオン・ブラン

　
目が覚めた。

暗い。

寝袋の寝心地は悪くない。
リビーや皆はもったいないほど気遣ってくれるが、実際のところ私は大して気にしていない。
気にしていないというより、気にならない。どこか懐かしいほどだ。

しかし何時間寝たのやら。
暗い中、ゆっくりと瞬きを繰り返す。

『調整』にこれほど時間がかかるとは。

目を閉じ、改めてエンパスの能力に意識を向ける。
皆、機体側にいるのだろう。声はしなくとも、それくらいはわかる。

リビー。リオ君。……モンテズマ君。

やはり彼の共鳴波だけが不明瞭だった。
感じ取りにくい波。

なぜだ。

エンパス自体はとても明瞭だ。
当たり前だ。調整したばかりなのだから明瞭でないと困る。

では、なぜだ。

私とリビーの不用意な会話が、彼に負担を与えたというのは、リビーから報告を受けていた。

顔を見て会話をしている間はある程度、彼の感情の波を感じ取る事ができていると思う。
それに加え、表情、声の調子、ちょっとした仕草、その他諸々の多くの情報がある。

しかしこうして少し離れると明らかにその波が衰える。


いや、波が衰えているのでは、ない？


彼の波が独特で微細である事は、間違いない。


……、しかし……、


……そうか、……私の、


……フォーカスが、



……、……チャンネル、が……





ああ、また。



　押し寄せてくる、　波、　それに、　飲ま　れ、　ない　よ、　う、　　に


　

ワジオンが『雪華雪香』を格納しているガレージ。
白髪で背の高い男と金髪で小柄な男が、何やら話し合いながら機体の調整をしているようだ。

僚機『バーントイエロー』とガレージを共有しており、それぞれの領域を簡単にパーテーションで区切って使用している。
そのため、僚機のパイロットであるアンドロイドの青年とオペレーターであるサイボーグの青年の姿も垣間見える。　

広めで明るく機能的な設え。それぞれの居住区画もある。