ENo.0201　水槽の脳髄

《オイオイなんだアレ！？　セクションエレベータ前に突然デカイ……あの……何？　塊？》
「送信データから解析取れました、『禁忌戦争』の頃の要塞敵機と反応が一致……えっ、なんで？」
《俺が！　それを！　今！　聞いてんの！！》
「申し訳ないですが我々にもわからないんですよ」
《あーもー、じゃーいいや！　分かるトコだけ教えて！》
「『禁忌戦争』において、バイオスフェア要塞を護衛していた古代遺産機らしいんです。そんなものがここにもう一機なんてあるはずないんですが……
　ノウさんも今使っている高速増殖培養槽は、元々はあの機体に装備されていたものを解析して実用化したものなんですよ」
《てことは、あいつもバイオ兵器出せんの？》
「そうですね。『禁忌戦争』においては他の護衛機は一切確認されず、あの機体が呼び出すバイオ兵器との激戦となったそうです」
《へー、そりゃいいや！　白兎のライダーってバイオ屋が多いしさ、ここで頂上決戦ってのも悪かねえな！》
「まあオリジナルとコピーの対決、初号機と量産機の対決っていうのはそりゃあロボットアニメの華ですけど、現実はそんなに甘くなくてですね」
《それにポチの『姉ちゃん』って言うからには、あいつも専用なんだろ？　それもバイオ兵器のための専用！　ライバルが一人増えたぜ、華麗に勝って俺の専用さを見せつけてやる！》
「ノウさん待って！　出撃を停止してください！　原材料の生産速度から試算すれば、あれはこっちの10倍はバイオ兵器を産出できるんですよ！？」
《上等だ！　こっちも白兎の筆頭ブロック、大隊最強クラスのバイオ屋が揃ってんだ！　10人で出しゃ数は10倍になんだよ！！》
「そういうことじゃないんですってば！　こっちのバイオ兵器を全部合計して、その10倍は出る計算になるんです！　聞いてますかノウさん！　ノウさーん！？」

生体脳使用ハイドラ『オーヴァルック』のサポート専門チームの待機所。
『オーヴァルック』帰投時は機体と生体脳の保全を行い、出撃時は戦果査定用の戦闘中継を見ながら手に汗握り、時には野次も飛ばす。