ENo.0110　『Phantom Beast』

しんと静まり返ったウォーハイドラの中に、食事を口に運ぶ音だけが響く。
不気味なほどに静まり返った遺跡の片隅で、うずくまるような姿勢でPhantom Beastを休ませながら、ヨナはひたすら思考を巡らせていた。

セクション・6の攻略後、グレムリンと接触することになる。
今日、通信端末に届いたボイスメッセージは、確かにそういっていた。
シルウェストリスが要求してきたことは2つ――1号機の破壊と、2号機と3号機の帰還。
自分たちはセクション・6を攻略したあと、その足で1号機の破壊へ向かい、2号機と3号機の護衛をすることになるだろう。
向こうははっきりと「護衛しろ」とは言っていなかったが、1号機と2号機を帰還させねばと言っていたから、つまりそういうことだろう。
忙しい年明けになるとも口にしていたが、どうやらシルウェストリス航空の上層部はなかなかにハイドラライダー使いが荒いらしい。

完全に無視をしても構わなかったが、Phantom Beastはシルウェストリス航空のサポートを受けている。
前にPhantom Beastに乗っていたエセルバートも、シルウェストリス航空とスポンサー契約を結んでいたため、ここは従っていたほうがいいだろう。
最後の一口を口の中に放り込み、ゆっくりと咀嚼をしてから飲み込む。

「……こうして、ゆっくりと食事をとる時間を確保することができるか、状況によっては今後怪しくなってくるな」

Phantom Beastは遺跡でのなんやかんやが長期化しても、十分なほどの燃料を入れている。
もし仮に途中で燃料が切れても、自分自身が電池となることで、Phantom Beastを動かすことはできる。
しかし、肝心のヨナは気をつけていないと、肉体的な疲労や精神的な疲労ですぐに倒れてしまうだろう。
自分が倒れればPhantom Beastも動けなくなる――それだけは避けなければならない。

「……幽霊機には幽霊機なりの、役目の果たしかたがあるんだ」

自分に言い聞かせるように呟いて、空っぽになった食器を軽く拭いてから、一旦しまい込む。
軽く休息をとってから、大きく深呼吸をし――ヨナは今の場所から移動するために、Phantom Beastを動かし始めた。

「……しかし、今回の食事には何か美味しいものがあったな……なんていうんだったか、あの料理は……」

そんな、ちょっとだけ呑気なことを呟いたりもしながら。

――しんとした森の奥の奥深く。
簡単な墓がすぐ傍に作られている家屋の窓には、時折人影が映るらしい。

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主に自分用ユニオン。整備を中心になんやかんやしていく予定。