ENo.0166　ステラ＝アレグレット

「ステラ、ちょっと話があるんだけど」


義肢のメンテナンスを始める前に、確認しておく。
ステラは「話って？」と頭に疑問符を浮かべている。
その表情は本心からのようだった。
つまり本人に心当たりはない。
悪い事を隠していたりなどというつもりはないのだろう。
或いは単純に、完全に忘れている。


「最初に、この義肢をつけた時のことなんだけど」

「うん」

「どこか、違和感とか、なかった？」

「違和感？　いや、そりゃあ、初めて義肢なんかつけたから違和感だらけだったけど……」

「或いは、どこか痛かったりとか」

「痛み……うーん…………あっ」


どうやら、ビンゴだ。


「……あったの？」

「あー……はははっ……あった…かも…」

「……最初につける時、どこか変なところあったら言ってって、言わなかったっけ？」

「いや、ちょっと待って、さっきも言ったけど初めてのことで違和感だらけだったんだよ？
　ちょっと痛みがあったからって、それが異変だなんて思わないでしょ」

「言い訳はどうでもいいから、その時のこと詳しく思い出してくれる？」

「うーん………随分昔のことだからなあ……
　たしか……最初は……こう……手ってどうやって動かすんだっけ……とか考えてたんだよね。
　それで……そう、動かしてみてって言われて……やってみたら本当に動いて……
　急に腕の感覚みたいなものが戻ってきたもんだから、なんか気持ち悪って思って……
　で、そのあたりだったかなぁ……なんか、こう、きゅ～～～って……
　その後、ぴりっとした感覚があって、それ以降は何にもなかったから、あ、これで完成なんだ。って思ったんだよね」


ようやく、辿り着いた。
この異常のない数字の異常さ、その原因に。


「あの、ベア……なんか怒ってる？
　別に隠してたわけじゃないんだよ？
　忘れてただけって言うか、気付いてなかっただけって言うか……」

「ステラ」

「はい」

「……逆よ。
　今、私は最高に気分が良い」




「作れるかもしれない。
　貴女の為の、完璧な義肢を」