ENo.0175　ラスティ・ネイル

「――祟鬼漬クロガネ、報告があります」

キルコから通信が入る。
その内容はもう把握していたけど、それでも報告を聞くのは辛かった。

「ラスティ・ネイルが確保対象のモーガン・クリーブランドを殺害、離反を開始しました」
「……私のせいだ。彼の意志を無視しなければ、こんなことにならなかったのに……！」
「ハァ……、アナタはいッつもそれだァ。覚悟を決めなさいと、常日頃から言ってるでしょうに」
「覚悟なら決めてるさ。……ランストラの騎士になるって決めた、あの時から」
「そういうのを覚悟を決めてないって言うんですよ」

キルコはいつものように飄々と言ってのける。何も知らない癖に。
何をすべきかなんてもうとっくに分かってるさ。それでも、その決断を下すのは心が痛む。

「彼の意志を確認する必要がある。まずは投降を促して――」
「それなら既に試みましたが、優秀な隊員を一人失う羽目になりました。彼の意志は固いようだァ」
「キルコ！お前勝手に……！！」
「ならどうしますか？まさか、アナタが説得に行くつもりだったとでも？」
「それはッ……」
「アナタはもう5年前と同じ立場じゃないんですよ、祟鬼漬クロガネ」

悔しさと不甲斐なさで奥歯を噛み潰す。
心を押し殺してでも決断を下さねばならないと、私自身の意志が慟哭していた。

「本当は何をすべきか分かっているはずでしょう？いい加減情に流されるのはやめなさい」
「――分かってるさそんなことッ！！」

デスクに拳を打ち付けて衝動的に立ち上がる。
心臓が灼けるように痛む。それでも私は、自分の責任を果たさなければ。

「私がギャラハッドで出る。キルコは『ロウブリンガー・モーリオン』の準備を進めてくれ」
「だからァ！アナタはグレイルの隊長なんですよォ！？もしあなたが死んだらどうなるか……！」
「これは私の責任だ！他のみんなを巻き込むわけにはいかない！！」

私はみんなを危険に晒すために騎士になったわけじゃない。
『イスカリオテ』の強さは驚異的だ。その攻撃に真っ向から立ち向かえるのは、私しかいない。

「馬鹿ですかアナタは！いい加減にッ――」
「準備を進めろって言ってるだろ！これは命令だ！！」

部屋から飛び出し、ガレージへと向かう。最善の判断が他にあることくらい、とっくに分かっていた。
……それでも、それでも私は、自分の過ちを自分の手で正さなければ。ケリをつけなければ、先に進めない。

ランストラの騎士として。そしてなにより、祟鬼漬クロガネとして。

ラキア・パラミダスが治める国『ランストラ』から派遣された遠征騎士団。
紛争の鎮圧が目的で残像領域にはよく訪れる部隊だが、今回の目的は遺跡の調査と解明が主。

人員はどれだけあっても足りないようで、様々なライダーに広く協力を募っている。
正式に入隊する必要はなく、寝床や飯の確保、小遣い稼ぎでの助力も大歓迎。
隊長の『祟鬼漬クロガネ』が温かく迎えてくれるはずだ。

部隊に不足している近接特化のライダーを育成するため、ユニオン活動は【格闘×5】。
ユニオン購入は【機動力+3%】、たまに【素材+1】になる予定です。（その時はなるべく通知します）