ENo.0193　インシオン

ＴＵＲＮ１８：浮かれてる場合じゃあない

（僚機のEno.196 アマレットの日記と多少リンクしております）

　エレが帰ってきて浮かれていたところに、僚機のアムから話を聞いた。
　行方不明だった友人グレンの機体が見つかったらしい。
　文字通り「機体が」。機体だけが。
『ステラブレンダー』は、コクピット部分に風穴の空いた状態で、あちこちを走り回っているそうだ。

「残像、か」

　この半年ですっかり身に染みついた、この世界の常識に照らし合わせて考えると、それしか考えられない。残像領域では、死者は何故か死後も残像として焼き付き、霧の中をうろついているという。
　実際、名前を知っている戦死者の機体が、同じ戦場で脇を駆け抜けてゆくのを見て、モニタ越しにも関わらず、背筋がゾッとしたものだ。

　だが、問題はそこじゃあない。
　アムがあれだけ、生存を信じて、探してくれとこちらにまで頼った友人の機体が残像となっている。それはすなわち。

「……つまり、そのグレンさんは、もう亡くなっている、という事ですよね」
「俺達みたいに、どこか別の世界で楽しくやってるなら良いが、普通の人間にそれは期待できねえだろ」
「で？」
「『で？』って何だよ」
「お前はどうしたいんだい、イン？　まさか半年近く付き合ってきた僚機に、友達に引導を渡してやれ、とでも言う気かい」
「それではまさに『黒の死神』だよ」
「うるせえよ、『白の偽神』」

　もう、冷酷無比のイシャナの『黒の死神』は死んでいるんだ。仲間の命を軽んじて見捨てる英雄はもういない。だから、答えも決まり切っている。

「言うさ。『引導を渡してやれ』って」
「！」
「だが、殺す為じゃねえ。アムが、友人として、グレンを眠らせる為に必要な儀式だ」
「俺はあいつの僚機として、そして父親として、それを手助けして、見守る」
「へえ……」
「その為に、お前らの力を借りたい」
「レイは『ステラシェーカー』を護衛しろ。流れ弾を落とす役には立つんだろ？」
「お前、何気に色々と根に持っていないかい？」
「うるせえ」
「もとい、その間に『ステラシェーカー』と『チェルノボーグ』で『ステラブレンダー』に取りついて、確保する。それが無理なら」
「破壊する」
「インシオン……」
「んな顔するんじゃねえよ。そこでお前の出番だろうが」
「『アルテア』だ。死者を送るには言の葉で浄化するのが似合いだ」
「……！」
「私、お役に立てますか」
「役に立つも何も、お前が一番の肝心要だろ。俺じゃあ叩き潰すしかできねえからな」
「それに、『母親』のお前に友人を看取ってもらえるなら、アムも反対はしねえだろ」
『インシオンの策を、「チェルノボーグ」と「ベルボーグ」、「ステラシェーカー」の戦闘能力も加味して分析したけど、悪くはないね』
『僕にはアルテアが未知数だけど、成功率は高いと信じるよ』
（ノリノリでぱたぱたしている）
「……よし。それじゃあ、行くぜ。『息子』の為に、一肌脱ぐか」
「アマレットさんが息子なら、そのお友達のグレンさんも、息子みたいなものですものね」
「やれやれ、じゃあ僕は伯父さんかな？」
「実の甥姪達に何も出来なかった分は、役に立つよ」

　残像領域に来てから、色んな事が――本当に色んな事があった。
　だが、その日々にも終わりが近づいているのを、ひしひしと感じる。
　後悔を残さないように、走り続けるだけだ。最後まで。

　To be continued...

Cafe ＆ Maintenance Mer-Millia

巨大樹木の中から、機械の大百足を探せば良い。
その樹の足元に、腕のいい整備士――あるいは料理人のいる店があるのだ。

カフェ＆メンテナンス『メル・ミリア』は、今日も密やかに営業を続けている。
禁忌戦争を生き抜き、霧とともに消えたとされたハイドラ大隊から戻ってきたと噂されている店主は、もはや多くを語らない。ただ、樹木に絡みつくように“眠っている”機械の大百足は、その時の店主のウォーハイドラだとされる。
時々たまに、思い出したように起き上がって、生きているかのように周りを歩き回るのだという。だから、この辺の木の根は金属の多脚にずたずたにされてしまって、あまり真っ当には育たないんだそうだ。店主はそう言って笑っていた。

今日のおすすめは、禁忌戦争で破壊されたと言われる要塞のひとつを模した店主手作りのケーキ。

！店および店主（ENo.7サブ）の既知可　4期既知（ENo.4）も可
！ユニオンに参加せずメッセで利用する体も歓迎
！ロールするキャラを推奨するかも

細かいこと：http://midnight.raindrop.jp/decoherence/union.html

（整備極ユニオンです。購入はユニオン主の独断。）